麦焼酎の原材料は大麦と大麦麹ですが、この原材料とならんでおいしい焼酎づくりに欠かせないのが「水」です。「いいちこ」づくりに使われるのはどんな水でしょうか? 今回は「水」をテーマに、「いいちこ」のおいしさを紐解きます。

※ここでいう「麦焼酎」は、主に三和酒類が製造する麦焼酎を指します。

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日本人にとって「おいしい水」とは?

水のイメージ

水は無色透明な味付けされていない液体ですが、「おいしい」と感じるのはなぜでしょうか? それには、水に含まれる「ミネラル成分の量」が深く関係します。

もちろん、どんな水を「おいしい」と感じるかは人によりますが、一般的に日本人の口に合うとされているのは、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分が“ほどよく”溶け込んだ水です。

例えば、海外のミネラルウォーターを飲んだとき、「硬い」「重い」と感じたことはありませんか? 逆に、日本産のミネラルウォーターは、よく「軟らかい」「まろやか」といった言葉でおいしさが表現されます。こうした「硬い/軟らかい」という感じ方の違いを生むのが、水のなかに含まれるミネラル成分の量なのです。そして、ミネラルが多い水にはしっかりとした飲み応えを感じ、少ない水には口当たりがよいと感じることが多いようです。

水のおいしさを表す1つの指標として「硬度」があります。硬度とは、水に含まれるカルシウムとマグネシウムの量の合計を数値化したもので、その数値が大きくなるほど硬度が高くなります(※硬度の計算方式は国により異なる)。

WHO(世界保健機関)の基準では、硬度0~60mg/l未満を「軟水」、60~120mg/l未満を「中程度の軟水」、120~180mg/l未満を「硬水」、180mg/l以上を「非常な硬水」としています。日本の水のほとんどは「軟水~中程度の軟水」に分類されます。

水の個性が、食の個性を生み出す

では、なぜ日本の水は「軟水」が多いのでしょうか。それには水を育む地形が大きく関わっています。

ヨーロッパ大陸など土地が広大なエリアでは、地面の下を地下水が時間をかけて流れていて、その過程で地中に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分が、水の中に多く溶け出します。

国土が狭い日本では、山から海までの傾斜が急なために、地中のミネラル成分がゆっくり溶け込む暇もなく、地下水が海に流れ出てしまいます。その結果、日本の水はミネラルがそれほど多くは含まれない軟水となるのです。

さらりとしてクセがない軟水の特性を利用して、日本人は和食文化を発展させてきました。例えば、ごはんをふっくら柔らかく炊くには軟水が適しています。カルシウムの多い硬水ではお米を硬く炊き上げてしまうためです。出汁をとるのも軟水が向いています。ミネラルを多く含む硬水では、昆布や鰹節などの繊細なうまみをうまく引き出せません。

一方、硬水が多いヨーロッパでは、長時間かけて作る煮込み料理が生まれました。硬水に含まれるカルシウムが肉を硬くする物質と結びついてアクとして出し、肉を柔らかくしてくれるのです。

このように、その土地の水と食文化は深く密接につながっていると言えます。

「いいちこ」の仕込み水は、どんな水?

水と酒づくりの関係も、切っても切り離せないものです。「名水あるところに銘酒あり」と言われるように、酒蔵の多くは水質のよい川や上質な水脈の近くにあり、「いいちこ」の製造場も例外ではありません。

三和酒類は豊かな自然の中にあり、その環境から生み出される、やわらかで良質な地下水を仕込み水として使用しています。

三和酒類本社

「いいちこ」の製造場では、硬度60mg/l前後の「やや軟水」に該当する地下水を使用。焼酎づくりにとってマイナス要素となる「鉄」や「マンガン」、「有機物」が少なく、発酵の際に酵母が栄養とするミネラル成分をほどよく含む酒づくりに理想的な水です。

大分・宇佐の風土に磨き上げられた水

大分・宇佐平野の俯瞰画像

三和酒類が本社を構える大分県宇佐市。市の中央部を流れる駅館(やっかん)川と、その支流がうるおす宇佐平野は、古くから知られた県内随一の穀倉地帯で、昔からいくつもの酒蔵が営まれ、数々の銘酒を全国に送り出してきました。

また宇佐地域は、火山活動時の隆起などによって生じた階段状の地形で、厚さ約5メートル以上の砂礫層や砂質土層に覆われているのが特徴です。

「いいちこ」に使われる地下水は、火山砕屑岩や溶岩から構成された地層が何十層にも積み重なった、岩盤中の亀裂水であると考えられています。天から降り注いだ雨水を、いくつもの地層が天然のろ過器のような働きをして、焼酎づくりに適した雑味のない清冽な水に磨き上げるのです。

三和酒類の集水洞
三和酒類の集水洞

水で広がる「いいちこ」の楽しみ方

水割り、お湯割り、炭酸割りと様々な楽しみ方ができるのが「いいちこ」の魅力のひとつですが、風土がもたらす水の個性によって焼酎の味わいに変化が生まれます。また水の温度や、水と焼酎の比率を変えてみるだけでも口当たりや香りの感じ方は変わってきます。

その日の気分や体調に合わせて、水で広がる「いいちこ」の魅力を探してみてください。

「いいちこ」を水割りで楽しむシーン

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※記事の情報は2021年3月5日時点のものです。

【参考文献】
・沖大幹/監修『いま「水」を考える2 生活に欠かせない水』岩崎書店
・早川光/著『ミネラルウォーター・ガイドブック』新潮社