商品名:いいちこスペシャル
アルコール度数:30%
原材料名:大麦麹(国内製造)、大麦
内容量:720ml

焼酎ファンのみならず、ウイスキー愛好家からもご好評をいただいている「いいちこスペシャル」。樽貯蔵酒をブレンドしたこの琥珀色の麦焼酎は、どのようにして生まれたのでしょうか。海外コンペでも評価の高い「いいちこスペシャル」誕生の背景や商品化までの道のり、この商品に込めた想いを開発担当者に聞きました。

お話をしてくれたのはこの方

梶原さん
三和酒類株式会社 SCM本部 本部付マネージャー
梶原康博さん

「いいちこスペシャル」開発メンバーの一人で、主に酒質(お酒の香りや味わい)のコンセプト立案を担当。現在はSCM本部という部署で、原料や資材の調達から物流までの生産活動に関わる計画を立てる業務のマネジメントを行っている。

三和酒類の考える「樽貯蔵酒とは?」を示したい

―「いいちこスペシャル」の発売は2005年ですが、梶原さんはこの商品開発にどう関わったのでしょうか?

梶原 当時、私は麦の新品種開発や微生物の研究を行う「醸造研究室」に所属しており、焼酎をつくるための技術開発や「いいちこ」の品質向上まで幅広く担当していました。

「いいちこスぺシャル」の開発では、お酒の中身を開発するチームで、どんな香りや味わいのお酒にするかといった酒質のコンセプトを立てたり、メンバーが実際にブレンドした試作品を一緒にきき酒(官能検査)しながら議論を重ねていました。

―なぜ「いいちこスペシャル」の開発に着手することになったのですか?

梶原 その頃、焼酎の市場では「樽貯蔵焼酎」人気が高まりつつありました。三和酒類でも樽貯蔵酒をブレンドした商品として、すでに「いいちこスーパー」を発売していましたが、この商品の場合、あくまで透明感のある焼酎の香味に奥行きを与える目的として樽貯蔵酒をブレンドしていて、「樽貯蔵」がメインコンセプトではありませんでした。そこで、三和酒類でも「樽貯蔵」を前面に押し出した商品を世に出そうということになったのです。

―そんな背景があって「いいちこスペシャル」の開発が決まったのですね。

梶原 でも、我々としてはただ単に「いいちこ」を樽に詰めただけの商品にはしたくありませんでした。三和酒類が送り出すからには、我々の考える「樽貯蔵酒とは?」の答えを示したい。我々の焼酎づくりの技術で出せる「最高の樽貯蔵酒」をお客様へ届けたい、という思いが開発メンバーには強くありました。

TSH-1酵母と樽が呼び覚ます、大麦由来の「バニラ香」

いいちこスペシャルイメージカット

―具体的には、どのような中身づくりを行ったのですか?

梶原 実は「いいちこスペシャル」の開発がスタートする前から、三和酒類では特徴的な長期樽貯蔵酒の研究開発を進めていて、この原酒にはバニラのような香りが感じられるという特徴がありました。

このバニラ香は、我々オリジナルの「TSH-1酵母」の働きによるもので、この酵母で醸した原酒を樽で寝かせることで、バニラ香が際立ってきます。

「いいちこスペシャル」開発の話が持ち上がったときに、三和酒類が送り出す樽貯蔵酒として、今こそこの原酒のもつ「バニラ香」という特性を活かして酒質開発を行おうということになり、中身づくりがスタートしました。

―その酵母は、「いいちこ25度」などに使われている酵母とはまた違うのですね?

梶原 はい。「TSH-1酵母」は、焼酎酵母とワイン酵母を掛け合わせて生まれたハイブリッド酵母です。

焼酎酵母には、ビール酵母やワイン酵母などと比べると、クエン酸や高アルコールに強いという焼酎を仕込むうえで欠かせない特性があります。一方、ワイン酵母のなかには、もともと大麦が持っている「フェルラ酸」という物質を「バニラの香りの素」に変化させるという特性を持ったものがあります。今回用いた「TSH-1酵母」は、その2つの特性を併せ持った酵母なのです。

―醸造研究室では、そうした新しい酵母の開発も行っていたのですね。できた焼酎原酒は、何年くらい樽に貯蔵するのですか?

梶原 平均して5年くらいです。450Lサイズのホワイトオーク樽を使って寝かせます。

蔵に眠る樽

―寝かせることで、樽の中ではどんな変化が?

梶原 樽は呼吸しているので、樽から木の香りの成分が溶け出したり、逆に焼酎が持っている嫌な香りの成分を吸収してくれたりします。

また、樽で寝かせることで、焼酎の成分に様々な変化が起こります。「TSH-1酵母」によって引き出された大麦由来の特徴的な香味が「バニラ香」に変わるのもそうです。あと、これは樽に限りませんが、長期貯蔵することで蒸留したての焼酎のとげとげした刺激が減り、口当たりが柔らかくまろやかになります。これはアルコールと水の分子が、よく馴染むことで起こります。

―樽によって中身に個体差が出てきたりは?

梶原 そうですね。同じ中身、同じ環境で寝かせた樽でも、一つ一つの樽で当然個体差は出てきます。ですので、原酒を分析し、基準の範囲内に収まった樽原酒をいくつも組み合わせてブレンドしています。

―安定した味を届けるにはブレンド技術も重要ということですね。中身づくりにおいて、一番難しかったことは?

梶原 やはり、「いいちこ」の世界観のなかで表現できる樽貯蔵酒とは何か?ということを具現化するところが一番難しく、一番こだわりました。

先ほどもお話したように、単に樽の香りがするだけではない、「いいちこ」のもつ透明感や味わいのバランスの良さを失わずに、我々が理想とするバニラのような甘い香りやまろやかな酒質を表現すること。それを突き詰めるために、幾度も開発メンバーできき酒をして酒質確認を行いブレンド比率を検討する、ということを行いました。

普段のきき酒は口に含んで吐き出す官能検査ですが、実際に試飲した時の喉越しや後味に「あれ?思っていたのと少し違うぞ?」とギャップが生じたりして、終盤の仕上げの部分でも結構苦労しました。

梶原さんトークカット

「麹文化の酒」として、焼酎を世界の主要スピリッツに

―ようやく完成したお酒がボトルに入っているのを見たとき、どう思いましたか?

梶原 本当に感動しました。「いいちこスペシャル」は、私にとって初めて酒質開発に携わった商品でもありましたから、なおさら「ああ、きれいだな」と思いました。

このボトルデザインのコンセプトは、「琥珀色の焼酎を限りなく美しく見せる」ことにあり、全体の美しさを追求するため、あえてラベルをなくし、必要な表示はビンの首の部分に集約しています。このボトルデザインで、2006年に「グッドデザイン賞」も受賞しているんです。

いいちこスペシャル商品画像

―中身のほうでもこれまでに数多くの受賞歴がありますね。

梶原 おかげ様で「いいちこスペシャル」は、世界的に権威のある「IWSC(インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション)2016」にて最優秀金賞の中で最上位の「Trophy(トロフィー)」に選ばれ、「SFWSC(サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション)2018」でも「DOUBLE GOLD MEDAL」及び、カテゴリー最高賞の「BEST IN CLASS」を受賞するなど、国内外のコンペティションで栄誉ある賞を頂いております。

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海外、国内での酒のコンペティションで焼酎の評価が急上昇!

そういった評価を受けていかがですか?

梶原 中身づくりに関わった者としては大変嬉しく、また受賞の際に審査員の方から頂いたテイスティングコメントを社内に持ち帰って、次の酒質の研究に活用させていただいたりもしています。

例えば「レモンカスタードのニュアンス」とか「温かみのあるクローブのような味わい」といった、私たちが普段焼酎づくりでは使わないような言葉で具体的に表現してくれて、こういう風に捉えてくださっているんだなと参考になります。

テイスティングコメント
これまでに受賞したコンペティションで、審査員から頂いた「いいちこスペシャル」に対するテイスティングコメントを視覚化したもの

―「いいちこスペシャル」のどういった要素が、世界からの評価につながっていると思いますか?

梶原 これは私の考えですが、焼酎そのものの良さが世界で認識されているかというと、まだそこには至っていないかもしれません。でもその中で、「いいちこスペシャル」の香味には「甘やかさ」とか「まろやかさ」といった誰もがおいしいと思える普遍的な良さがあり、そうした部分が世界でも評価されているのではないでしょうか。

今後は、そのおいしさの背景にある原料の魅力や焼酎づくりの技術など、「いいちこスペシャル」独自のキャラクターが認知されるようになると、より面白くなってくると思います。麹でつくる酒が世界でも評価され始めていますので、「麹文化の酒」として、世界の主要スピリッツの仲間入りができるような、焼酎ならではの魅力を発信していければと思います。

 “特別な日の特別な酒” がもたらす甘美なひととき

「いいちこスペシャル」イメージカット

―梶原さんが思う、一番おいしい「いいちこスペシャル」の飲み方は?

梶原 さまざまな飲み方が楽しめますが、私としては「いいちこスペシャル」のおいしさをそのまま味わえるロックがおすすめです。氷が溶けるときにバニラの香りが広がって、時間の経過とともに香味が少しずつ変化していくのが楽しめます。

基本的にはお酒自体の味わいを楽しんでいただくのが一番ですが、料理やおつまみに合わせるとしたら、西京焼きのような上品な香ばしさのある料理がおすすめです。あとは、チョコレートのような甘いものにも合いますし、バニラアイスクリームにちょっと垂らして大人のデザートとして食べてもおいしいです。

―「いいちこスペシャル」は、ゆっくり時間をかけて味わう焼酎ということですね。

梶原 そうですね、そういう想いがあって、「いいちこスペシャル」という商品名にも“特別な日の特別な酒”という意味が込められています。

個人的なエピソードになりますが、実は開発から10年近く経った頃、出張先でたまたま立ち寄ったオーセンティックバーで、「いいちこスペシャル」が棚に置いてあるのを見かけたことがあります。お客様層を考慮して和酒は他に1本も置いていないお店でしたが、「この焼酎ならいいよ」とお客様からの声があったそうで。「ああ、こんなところにある…」と久しぶりに感動しました。バーというのは、日常から少し離れた空間で、ゆっくりお酒を楽しむための場所ですから。

ですので、皆さまにも、例えば親しい方々と楽しむ休暇やお一人でのんびり読書をするときなど、ゆったりとした時間の中で「いいちこスペシャル」の香り、味わい、余韻にじっくり浸っていただけたらと思います。そして、「麦焼酎」ってこういうおいしさもあるんだ、ということを知っていただけたら嬉しいです。

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いいちこスペシャル

※記事の情報は2021年3月2日時点のものです。