三和酒類株式会社では、これまで様々な「いいちこ」ブランドの商品を展開してきましたが、2020年に初の缶入り商品となる「いいちこ下町のハイボール」を発売しました。炭酸とベストマッチした「いいちこ」そのものの爽やかで自然な味わい。目を引く斬新なデザインの缶。ありそうでなかった缶入りの「いいちこ」は、果たしてどのようにして生まれたのでしょうか? 開発担当者に、開発の裏側や商品のこだわりについて聞いてみました!

お話をしてくれたのはこちらのお二人

「いいちこ下町のハイボール」開発者の高岸さんと松本さん
高岸 崇さん(写真左) 三和酒類株式会社 CCRNチーム 課長
松本 真一郎さん(写真右) 三和酒類株式会社 研究所 商品開発課 課長

手軽にそのまま楽しめる「いいちこ下町のハイボール」

―高岸さんと松本さんは「いいちこ」ブランド初の缶入り商品「いいちこ下町のハイボール」の開発に携わっていますが、それぞれの役割を教えてください。

高岸:私は開発の全般的なこと、実生産部門との調整、それからパッケージデザインの準備や調整まで全体的な製品実現までを担当しました。

松本:私は、製品開発のうち酒質、つまり香りや味わいなどお酒の中身を開発するチームのまとめ役をしています。「いいちこ下町のハイボール」でも、酒質開発チームのリーダーを務めました。

―そもそも「いいちこ下町のハイボール」の開発は、どのような経緯で始まったのでしょうか?

高岸:「ハイボール」というスタイルについては、以前から「いいちこ」の飲みやすさや爽やかさを味わってもらえるおすすめの飲み方として、お客様にも炭酸で割るハイボールを提案していました。

3年前のあるキャンペーンでも、「いいちこ」の割り材として「いいちこ」と同じ仕込水を使ったオリジナル炭酸水(非売品)を配って「いいちこハイボール」を提案したのですが、それがお客様にすごく好評でした。

松本:そこで、自分で割って飲むのもいいけれど缶入りもあったらいいよね、という話になりました。

高岸:それで手軽にすっと飲める缶入りハイボールの検討を始めたわけです。これならいけそうだな、と本格的に動き出したのは1年半くらい前です。

―「手軽に飲める」というのがスタイルのコンセプトだとしたら、中身の面ではどんな部分を意識したのですか?

高岸:いままでの「いいちこ」のお客様に楽しんでいただきたいのはもちろんですが、まだ焼酎自体に馴染みがない、という方にもおいしく味わってほしいという思いでつくりました。

味わいのベースとなる「下町のナポレオン25度 いいちこ」は、華やかですっきりしていて深みのある味。その特徴を生かした上で、炭酸で飲みやすくして、手軽に味わってもらいたいというのがコンセプトです。

「いいちこ下町のハイボール」開発担当の高岸さん
CCRNチーム 課長 高岸 崇さん

“焼酎本来のおいしさ”で勝負する「いいちこ下町のハイボール」

―開発の過程で苦労したことは?

松本:「いいちこ」は40年以上続いているブランドなので、すでに多くのファンがいます。お客様の期待を裏切らないよう、良さを残したまま、ハイボールでもやっぱり「いいちこ」だね、と言ってもらえるものにしなくてはいけませんでした。

「いいちこ」らしい華やかな香りやしっかりとした味わいを守りつつも、新しいと思ってもらえる。このバランスを取ることに一番苦労しました。

それから本格麦焼酎「いいちこ」本来のおいしさだけで勝負するという点はこだわりました。「いいちこ下町のハイボール」は、パッケージにも書いてあるようにプリン体、糖質、香料、甘味料がすべてゼロです。プリン体ゼロは焼酎の特徴なのですが、砂糖や糖類を使わない糖質ゼロ、さらに香料や甘味料もゼロというのは、一般的な市販のハイボールでは他にないと思います。

「いいちこ下町のハイボール」開発担当の松本さん
研究所 商品開発課 課長 松本 真一郎さん

―香料や甘味料を入れてみようか、という意見は?

松本:そこは一本筋が通っていて、一度も出ませんでした。

甘味料や香料を加えれば香りが立ったり、甘さでおいしく感じたりします。ただ、この商品に関しては、何より「いいちこ」らしさを大事にしたかったので、はじめから頭になかったです。大変ではありましたけど、その分迷いがないので、取り組みやすかったです。

―となると味の調整はどのように?

松本:「ブレンド」という作業で香りや味を決めるのですが、実はそこが私たちの強みなのです。

ブレンドするには、色々な原酒を持っていないと思うような味が出せません。しかし当社では何十種類という味の原酒をつくり分けてストックしています。これを商品に応じてブレンドして理想の味を出します。焼酎をつくるうえではベースの技術で、私たちにとっては当たり前の感覚です。

―「いいちこ」の原料は基本的に大麦だと思いますが、原酒の違いというのはどのように表れるのですか?

松本:一部の限定商品などを除くと、当社でつくっている焼酎は基本的にすべて大麦が原料です。原料は同じでも、麹や酵母、蒸留方法の違いで、香りに特徴のある原酒、味に特徴のある原酒、その両方を持つ原酒、香りでも異なった特徴のある原酒をつくり分けています。

それらの原酒をブレンドするので、華やかな香りや、奥行きのある味わいを実現できます。だから香料や甘味料を使わなくても自信を持って出せるのです。

―「いいちこ下町のハイボール」で使用しているのは、「下町のナポレオン 25度 いいちこ」とは違うブレンドなのでしょうか?

松本:はい。「いいちこ」そのものを感じていただけるよう、この商品のために新しくブレンドしています。

―松本さん自身もブレンドを担当したのですか?

松本:「いいちこ下町のハイボール」では、チーム内の別のメンバーがブレンドを担当しました。私自身は過去に他の商品でブレンドを担当してきましたが、今回は私を含め、チームで利き酒を行うなど担当者のフォローに回りました。

「いいちこ」を蒸留するポットスチル
「いいちこ」を蒸留するポットスチル(単式蒸留機)。このスチルで一回だけ蒸留して本格焼酎「いいちこ」はつくられる

大分名産のかぼすが隠し味。自信を持ってお届けする「いいちこ下町のハイボール」

―原材料に「かぼすスピリッツ」が入っているのも特徴的ですね。

高岸:かぼすのフレーバーを前面に押し出すのではなく、炭酸割りにした時に「いいちこ」らしさを少し後支えする、隠し味的な手段として、ほんの少しかぼすスピリッツを入れています。

―かぼすといえば大分県の特産品ですからね。やはりそこは意識したのでしょうか?

松本:実は、意図的にかぼすを選んだわけではなく、「いいちこ」らしさを追求していくなかで、結果的にかぼすスピリッツを入れることになったのです。

レモンスピリッツをはじめ、いろいろと試行錯誤するなかで、何も入れないよりは、かぼすスピリッツをほんの少し入れた方が「いいちこ」らしい、という評価になったのです。この、かぼすスピリッツを微量加えたときのバランス加減も、酒質を決めるうえでけっこう難しいところでした。

―試行錯誤を重ねた商品ができて、社内外の評価はどうでしたか?

高岸:社内では、「いいちこ」ならではの柔らかい口当たりの良さ、バランスがいいといった評価が多かったです。あと、たまたまかぼすを選んだことに、「不思議だけれど納得だね」という声もありました。社外からは「香りがいい」「すっきりしている」「上品な味わい」といった感想を多くいただけて、本当にうれしかったです。

―ユーザーからも、自分で「いいちこ」を炭酸で割るよりも「いいちこ下町のハイボール」のほうが「いいちこ」の香りが感じられる、という声が聞かれました。

松本:「プロがお届けする、いいちこハイボール」ということもコンセプトの一つです。香料や甘味料を使わずに酒質だけで表現する焼酎ということです。炭酸の入れ具合や隠し味も含めて「いいちこ」らしさを感じる、香りと味の最適なバランスを、メンバーと一緒に見つけることに徹底的にこだわりました。

「い」の字が目を引く「いいちこ下町のハイボール」缶。イラストの女性はだれ?

―「いいちこ下町のハイボール」という商品名は、当初から決まっていたのでしょうか?

高岸:開発着手の時はまだ決まっていませんでした。ただ、これから焼酎にエントリーしていただくお客様にも親しんでもらえて、それでいて既存の「いいちこ」ファンのお客様にも「いいちこ」だ、とわかってもらえるようなネーミングとパッケージにしたいと思っていました。

「いいちこ下町のハイボール」の缶デザイン
「いいちこ」のカラーを踏襲しつつ、「い」の文字を強調しイラストをあしらった斬新なデザイン

―これまでの「いいちこ」ブランドとは、パッケージデザインの印象が違いますね。

高岸:缶のデザインは、「下町のナポレオン」のベースカラーの緑と黄色を継承しつつ、新しいデザインを起こしました。パッケージの雰囲気が変わっても「いいちこ」だとわかってもらえるようにロゴの平仮名を使い、それでいて強く印象に残るように「い」を前面に押し出しています。

―缶に描かれたこの女性は?

高岸:「いいちこ」の「優しい酔い」、「少し酔いました」というフレーズのような、穏やかな時間を楽しんでほしいという思いで商品を提案したので、それを表現するために「癒し」「親しみ」「やさしさ」のイメージから、やさしさで包み込む女性でいわゆる母親像、そしてもっと気軽なイメージでスナックのママさんのような存在がいいかもね、というところに話がつながって、このデザインに決まりました。

―スナックのママさんをイメージしているのですね。松本さんはデザインを初めて見たとき、どう思いましたか?

松本:確かにいままでの「いいちこ」にはないインパクトはありました(笑)。

ただ「い」の文字で「いいちこ」だということは一目でわかりますし、下町のナポレオンのイメージを引き継ぎつつ、新時代に向けたメッセージも感じられます。新しいお客様に「いいちこ」を知って飲んでもらいたい、という会社の決意が表れたデザインになったと思いました。 

―月かな?と思ってよく見るとかぼすだったり、細部にも仕掛けがあって、売り場でも目立ちそうですね。ところで、缶からそのまま飲んでもいいのでしょうか?

高岸:気軽さ、便利さを追求した商品なので、基本的に缶のまま飲んでいただくことを想定しています。

もちろんグラスに注いで飲むのもアリです。グラスに注ぐと、より香りを感じられると思います。それぞれに楽しんでもらえればと思います。

和食、揚げ物、テイクアウト惣菜。「いいちこ下町のハイボール」はどんな食事にも合う!

―食べ物との相性はどうでしょう?

高岸:「いいちこ」自体が食事に合わせて飲むお酒なので、「いいちこ下町のハイボール」も食中酒ということを十分に意識しました。

たとえば和食を中心に、淡泊で優しい味わいの食事でしょうか。白身魚なども合います。一方で唐揚げや焼き鳥など味の濃い食事も、口の中をすっきりさせてくれるので、食事を選ばず合わせられるのかなと思います。

松本:清酒やワインを飲むときには、お酒に合わせる食事を選ぶと思いますが、「いいちこ下町のハイボール」には、食事を選ばない良さがあります。時節柄、飲食店からテイクアウトのお惣菜を購入される方もいらっしゃると思いますが、様々な食事と相性が良いです。気取らずというか、相手を選ばないのが「いいちこ」の良さだと思っています。

―「いいちこ」のシンプルなハイボールは、すっきりとしていながら味わい深くて、どんな食事も引き立ててくれそうですね。

松本:香料や甘味料を入れずに、焼酎がもともと持っている自然な香りだけで表現しているので、いろいろなものに合うと思います。

「いいちこ下町のハイボール」イメージカット

「いいちこ下町のハイボール」で「いいちこ」や焼酎の素晴らしさを再発見してほしい

―「いいちこ下町のハイボール」への思いと、ユーザーの皆さんへのメッセージをお願いします。

高岸:長期間にわたって試行錯誤して、意見交換をしながら出来た商品なので、多くのお客様に手に取っていただくことを願っています。一人でリラックスしたい時や、ご家族や友人、仲間同士で楽しいお酒を飲みたい時など、あらゆる場面で選びやすいお酒だと思います。

数多くあるハイボールジャンルの一つの選択肢として、いいちこのハイボールがあることをお客様に認知していただいて、「いいちこ」とは、また焼酎とはこういうお酒なんだ、と体感して好きになってもらえればうれしいです。

松本:三和酒類は、One for all, all for one の精神のもと、チームプレイで仕事をしていく、ということを目指しています。今回の「いいちこ下町のハイボール」も、企画から開発、デザイン、生産、営業まで、多くのスタッフの思いがこもった商品です。それがより多くのお客様に伝わればとても幸せですし、必ずそうなってくれるだろうという強い期待を持っています。

「いいちこ」は日本で一番飲まれている麦焼酎です。「いいちこ」ファンの皆様には、新しい「いいちこ」を再発見してほしいですし、あまり焼酎を飲んでこなかった若い世代には、焼酎代表として、日本にはこんなオリジナルのおいしいお酒があるんだという発見の入り口の役割を果たしてほしい、そんな思いがあります。

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※記事の情報は2021年1月15日時点のものです。