「いいちこ」づくりの大ベテラン・丸尾剛さんが、全国各地の“酒場メシ”を食す! 今回訪れたのは、横浜の歓楽街で100年近くやきとり店を営む『井筒屋』さん。代々受け継ぐ秘伝のタレに関西割烹で修業した店主の細やかな仕込みが光る「やきとり盛り合わせ」を、「いいちこ深薫」のソーダ割りとともにいただきます!

“酒場メシ”ハンター

丸尾剛さん

丸尾 剛(まるお つよし)
三和酒類株式会社 生産本部所属 40年の焼酎づくりのキャリアを生かし、社内の若いつくり手たちのスキルアップをサポートする「焼酎づくりの先生」。普段家で飲むのは、もっぱら「いいちこ20度」か「いいちこ日田全麹」。最近、麹を使った調味料づくりにハマッている。

昭和3年創業。変わりゆく歓楽街で、変わらぬおいしさと飽きのこない味を届けるやきとり店『井筒屋』

オフィス街、商業施設、商店街、歓楽街とエリアによって異なる賑わいを見せる横浜市中区。創業からおよそ1世紀を刻む老舗やきとり店『井筒屋』は、そんな中区の歓楽街のど真ん中にあります。

井筒屋店内にあるカウンター
井筒屋店内のテーブル席

和モダンな店内は、手前にカウンター席とテーブル席。カウンター奥にあるゆったりとしたテーブル席のスペースは、宴会利用にもぴったりです。隅々まで手入れが行き届いた清潔感のある空間に、落ち着いた雰囲気と心地よさが漂います。

出迎えてくれたのは店主の川辺太一(かわべたいち)さん。川辺さんの祖父が昭和3年頃に創業してから、祖母&叔母、父と引き継ぎ、川辺さんで4代目。地元で長く愛される老舗を守り続けています。

井筒屋の店主・川辺太一さん

『井筒屋』の創業の地は現在の場所からすぐ近く。そこから2度の移転を経て、今の場所で36年目になると言います。外国人の住人も増え、街の様相は時代と共に変化していますが、常連客に愛される変わらぬ味を提供しています。

川辺「もとは祖父がひとりで始めたやきとり屋なんですが、父が小学生の頃に亡くなり、その後、祖母と叔母(父の姉)、父、と継いできて、私で4代目になりますね。昭和3年創業と言っていますが、祖父も祖母も亡くなっているので正確には分かりません。まあ、言ったもん勝ちですね(笑)。86歳の叔母が『私が生まれた頃にはやっていた』と言うので、創業85年以上は確実です」

飲食店のみならず、街の移り変わりが激しいエリアにあって、1世紀近い老舗はもはや街の財産です。

川辺「父が子どもの頃の店は、1階が店舗で2階が住宅だったそうです。ランドセル背負って『ただいま』と帰ってくると、お客さんが『お帰り』なんて声をかけてくれたそうで。お客さんも銭湯帰りに桶持って毎日通ってくれる常連さんが多かったそうです」

丸尾「カウンターで子どもが宿題やっているようなお店、ありましたね。昭和の古きよき時代ですね」

川辺「まさにそんなお店だったそうです。今は外国の方も増え、街の雰囲気はずいぶん変わりましたが、やはりうちの店は常連さんが6~7割。常連さんが新しいお客さんを連れてきてくれて、枝分かれして…という感じで、おかげ様で今日まで続けてこられました。長く続く秘訣ですか? それは街が変わっても店の基本は変わらないことですかね。先代がつくってくれたものがありますから」

井筒屋の神棚

関西割烹で4年間の修行の後、4代目として店を引き継ぐ

地元で長く愛されている『井筒屋』。川辺さんが「お店を継ごう」と思ったのはなぜでしょうか。

川辺「中学生の頃、よくお店の手伝いに来ていたんですよ。当時はバブル真っ盛り。お客さんがたくさんお小遣いをくれたんですね。それで『なんて楽しい仕事なんだ。よし継ごう』と思いました(笑)」

丸尾「なるほど(笑)。それで高校卒業後、すぐに店を継がれたのですか?」

川辺「横浜の関内にある関西割烹の店で19歳から4年間修業しました。そこの大将は全国から修行希望者が集まる銀座の有名店出身で。修行は厳しかったですよ。バブルはもうはじけていたので給料も安かったですし。でも負けず嫌いなので、辞めようとは思わなかったですね」

丸尾「割烹で修業されたからこその、この清潔な店内なのですね」

川辺「いやいや、普通ですよ。うちは継ぎ足しタレの壺もきれいなので、逆に絵にならないんです(笑)」

丸尾「壺、先ほど目に入ったのですが、周りにこびりつきなどもなく、きれいにしてらっしゃるなと思っていました。焼き場の美しさにも大変驚きました」

井筒屋の焼き場とタレの壺

川辺「ありがとうございます」

丸尾「継ぎ足しタレは初代からですか?」

川辺「んー、正確には分からないですが、今の場所に移ってから壺は割れていないので、丸35年は継ぎ足していますね。まあ、戦争やら移転やら、いろいろありましたから」

丸尾「川辺さんは本当に正直な方ですね。謙遜されていますが、店内の美しさに加え、このショーケースに並んだ食材の仕込みの細やかさ! 職人の心意気を感じます」

井筒屋のショーケースに並んだ串

タレでも塩でも! ひと手間がおいしい「やきとり盛り合わせ」

丸尾「それではさっそく、『やきとり盛り合わせ』をいただいてもいいでしょうか?」

川辺「もちろんです。うちの盛り合わせは、お客様の好みに合わせお出ししているんですよ。どのような串がお好みですか?」

丸尾「おすすめがあれば、ぜひ教えてください」

川辺「やき“とり”と言いつつ、うちは昔ながらの豚もつ串が多いのが特徴なんです。昔、鶏の値段が高かった頃は、豚のもつを焼いたものが“やきとり”だったんですよ。なので、うちは今でもタンもナンコツも白もつも豚です」

井筒屋のやきとりメニュー

丸尾「なるほど! それでは豚もつ串を何本かお願いします。それからとり皮と…、『ぼんぼち』とはなんですか?」

川辺「ぼんじりとも言いますが、鶏尾羽の先にある三角形の部分ですね。ジューシーで脂のうまみがあります」

丸尾「では、ぼんぼちもお願いします」

川辺「承知しました!」

井筒屋の焼き場でやきとりを焼く

川辺「お待たせしました。左から、とり皮、つくね、ぼんぼち、白もつの塩、タン、軟骨つくね、ナンコツです」

井筒屋のやきとり。左から、左から、とり皮、つくね、ぼんぼち、白もつの塩、タン、軟骨つくね、ナンコツ

丸尾「香りがたまりませんね。では、ぼんぼちから」

井筒屋のぼんぼちを食べる丸尾さん

丸尾「すっきりとした脂のうまみ! これは何本でも食べられそうです」

「やきとり盛り合わせ」に合わせるのは、「いいちこ深薫」のソーダ割りです。

井筒屋のやきとり盛り合わせにあわせる「いいちこ深薫」のソーダ割り

丸尾「『いいちこ深薫』は、“料理に合わせる”ことを追求してつくられた料飲店さま向けの『いいちこ』。常圧蒸留酒をブレンドした深い薫りと豊かなコクが特長で、料理ごとに表情を変えて寄り添ってくれるんです」

「いいちこ深薫」のソーダ割りを飲む丸尾さん

丸尾「(一口飲んで)うまい。ソーダで割ると『いいちこ深薫』のカスタードのようなまろやかな風味が心地よい泡になって、ぼんぼちの脂とやさし~くなじみますね。最後に、ソーダで口の中がさっぱりリセットされるのも心地いい!」

丸尾「続いて、白もつの塩を…」

井筒屋の白もつを手に笑顔の丸尾さん

丸尾「お~、クセのあるうまみ! 脂をまとっているのがおいしいですね」

川辺「おっしゃる通り、脂がおいしいんです。脂がついている白もつはなかなかないんですよ」

丸尾「塩の串と『いいちこ深薫』。うまみとうまみがお互いを引き立て合います!」

井筒屋のやきとりを手に取る丸尾さん

丸尾「(次々と串を手に取りながら)軟骨つくねは香ばしくてコクがありますね。ナンコツは噛み応えがあって、肉汁も感じられます。そしてとり皮は、いつも食べている福岡のとり皮とは違う。あっさりとした香りと味わいです。どの串にも、“印象に残るおいしさ”がありますね」

川辺「軟骨つくねは、ショウガやニンニク、オイスターソースを混ぜて、一度揚げてから焼いているんです。ナンコツは豚のノドナンコツで、ハツとノドにつながる肉も全部一緒に入っているから食べ応えが出るんですよ。とり皮は脂を一度抜いているので、さっぱり仕上がるんです」

丸尾「いやあ、さすがのひと手間。だからこんなにおいしいのか!」

関西割烹仕込みの繊細な仕事が光る旬の「刺身盛り合わせ」

そしてもう一品、「井筒屋」で外せないメニューが「刺身盛り合わせ」(時価)です。

丸尾「やきとりも抜群ですが、カウンターに並んでいる魚も目を引きますね」

井筒屋のショーケースに並ぶ魚介

川辺「ありがとうございます。うちは刺身も人気なんです。提供を始めたのは父の代からで、常連さんにも飽きずに楽しんでもらえるようにと続けてきました。魚は横浜中央市場で仕入れていて、もう30年以上のお付き合いになります」

丸尾「それでは、川辺さんの目利きで仕入れた魚介から、バランスよく盛り合わせでお願いします!」

川辺「承知しました。マグロ、カンパチ、イカ、赤貝、タコ、シラウオでいきましょう!」

井筒屋の刺身盛り合わせ。マグロ、カンパチ、イカ、赤貝、タコ、シラウオ

丸尾「まずはマグロから」

井筒屋のマグロ

丸尾「おほ~、うまいっ。上品な脂のうまみが広がります! これはみなさん食べた方がいいですよ(笑)」

「刺身盛り合わせ」に合わせるのは「いいちこ深薫」の水割りです。

井筒屋の刺身盛り合わせと「いいちこ深薫」の水割り

丸尾「いいですね~。『いいちこ深薫』水割りのクリーンな味わいが、新鮮なマグロの脂をすっと受け止めてくれます。後味がすごく軽やかになりますね」

丸尾「続いてイカ。これは甘い! …あ、イカを食べてから『いいちこ深薫』を口に含むと、常圧蒸留由来のリッチな風味が、不思議と素朴でやさしい味わいに変わります。イカのまろやかな甘さを引き立てながら、後味は重くならない。“料理が酒の表情を変える”とはまさにこのことです。新たなおいしさの発見です!」

井筒屋の店主・川辺さんと談笑する丸尾さん

丸尾「盛り合わせだと、それぞれに違うおいしさが楽しめていいですね。シラウオは磯のミネラル感があって、みずみずしい。赤貝はコリコリとした食感が心地いい。タコは弾力があって、噛むほどに甘みが広がります。カンパチは身が締まっていて実に爽やか。どれも本当に新鮮です。川辺さん、さすがの目利き!」

川辺「ありがとうございます」

何にでも合う「いいちこ」は宣伝しなくても売れる

店主の川辺さん、実は毎日「いいちこ25度」を飲む“いいちこフリーク”だそう。

川辺「水割り、ソーダ割り、お茶割り。毎日どれかで飲んでいます。仲間がみんな『いいちこ』を飲んでいたのがきっかけで、自分も飲むようになりました。クセがないから、何にでも合うのがいいんですよね」

丸尾「ありがとうございます。井筒屋さんでも当初は『いいちこ25度』を置いてくださっていたそうですね」

川辺「そうですね、20年以上、僕の記憶にある限りはずっと置いていました。それが『いいちこ深薫』が出たときに“お店向け”だと聞いて、そこからは深薫一本に絞ったんです」

丸尾「ええ、さっきも触れましたが、『いいちこ深薫』は“料理に合わせる”ことを追求した料飲店さま向けの『いいちこ』です。味わいだけでなく、幅広い温度帯やアルコール度数でおいしく飲めるように設計してあるんですよ。お店では会話を楽しみながら一杯をゆっくり飲むことが多いので、温度やアルコール度数が変わっても最後までおいしさが続くようにつくられているんです」

川辺「なるほど! それで“お店向け”なのですね。『いいちこ』は宣伝しなくても勝手に売れるお酒ですし、『いいちこ深薫』にしてからもボトルキープは多い。やっぱりおいしいからだと思います」

丸尾「ありがたい限りです」

井筒屋にある「いいちこ深薫」のボトルキープ

気になる“酒場メシ”がいっぱい! これも食べたい【丸尾’sセレクト】

冬はフグも登場し、仕入れや季節によるメニューが入れ替わる『井筒屋』。変わらない味を守りつつ、常連客を飽きさせない工夫をしているのも、地元で長く愛されている理由でしょう。

そんな『井筒屋』のラインナップから、焼酎づくりの大ベテラン・丸尾さんが「これは食べたい!」と選んだ酒場メシをご紹介します。

まずは「ハマグリ焼」(時価)。

井筒屋のハマグリ焼き
この日は2個1,400円(税別)

丸尾「とにかく大きい! レモンを絞って…(貝汁をすする)。うめー! これはダシそのものです。身は味が濃くてなめらかでまろやか。ここに『いいちこ深薫』ソーダ割りを合わせると、深薫の甘い香りときめ細やかな泡がハマグリのうまみを包み込んで、余韻までぜいたくにしてくれますね」

続いて、「金目煮」(時価)。

井筒屋の金目煮
この日は1,200円(税別)

丸尾「これはおいしい。『金目煮』には、グラスに注いでからあえて20分ほど置いた『いいちこ深薫』のロックを。時間を置くことで口当たりがやわらかくなって、主張が前に出すぎず、煮つけのうまみをそっと後ろから押し上げてくれる。不思議なほど自然になじみます!」

焼酎づくりのベテランならではの飲み方も交えつつ、そのほかにもたくさんのお料理を「いいちこ深薫」とともにいただきました。

店主の正直さと料理人としての心意気を感じる名店

真剣な面持ちで焼き場に向かう井筒屋の店主・川辺さん

丸尾「焼き場に入ると川辺さんの顔つきが変わりますね」

川辺「そうですか? 自分では分からないですけど」

丸尾「正直な受け答えからも、お店のまっすぐな姿勢が伝わってきます。守るべきものは守りつつ、こだわりも持つ。串にしても前処理や仕込みをしっかりされていて、『ただ焼いて出すだけじゃねえよ』という川辺さんの声が聞こえてきそうです(笑)」

川辺「ははは、見抜かれてますね(笑)」

丸尾「仕込みを大切にし、衛生面に気を付けるという点も私たちの酒づくりと相通じるものがあります。ベースに信念を持つ。川辺さんの姿勢に共感しました」

川辺「ありがとうございます。またぜひお立ち寄りください」

丸尾「はい! 本当に素敵なお店でした。友人知人にも胸を張っておすすめします」

井筒屋の店主・川辺さんと談笑する丸尾さん

今回お世話になったお店はこちら!

井筒屋の外観

『井筒屋』
神奈川県横浜市中区曙町1-3
TEL:045-261-0896
営業時間:16:30~22:00
定休日:木曜日・第2水曜日

※記事の情報は2025年9月12日時点のものです。