居酒屋の人気おつまみ「焼き鳥」。ヘルシーなイメージのあるおつまみですが、ダイエットにも向いているのでしょうか? 管理栄養士の安中千絵先生に、おすすめの種類や食べ方のポイント、合わせるお酒について教えていただきました。焼き鳥もお酒も、長く健康的に楽しみたい方はぜひチェックしてみてください。

安中千絵さん

この方にお聞きしました 
安中千絵(あんなかちえ)さん 
管理栄養士。食品の企画開発ディレクション、レシピ開発、料理撮影、PR、栄養情報監修など、総合的に「食べて健康」を演出する株式会社キャセロール代表。「美味しさ×健康×エビデンス」をモットーに、講演、執筆、健康経営セミナーの提供など幅広く活動中。

焼き鳥はダイエットに向いている? 

焼き鳥は種類にもよりますが、低脂質で高たんぱく、カロリーも控えめなので、おつまみとしても食事としても優秀です。鶏肉自体が、ダイエットや健康を意識する方に適した食材だと言えます。 

また調理法として、茹でると脂が落ちると思っている方も多いと思うのですが、実は茹でるよりも高温で焼く方がさらに脂が落ちるんです。焼き鳥は網の上で焼くスタイルなので、より脂が落ちますし、なによりノンオイル調理のことが多いですよね。そういった点でも、焼き鳥は健康的なおつまみです。 

もしご家庭でフライパンなどで調理する場合でも、できればノンオイルで、鶏肉から出る脂をこまめにペーパーで拭きとりながら焼くとよいと思います。 

焼き鳥のカロリー・栄養素比較 

焼き鳥1本あたりのカロリーは、使用する鶏肉の量によって変動します。 ものによって大きさがかなり異なりますが、一般的には1本あたり30~60gの鶏肉を使用します。以下の表は1本あたり40gの生の鶏肉を使用し、塩で味付けした場合のカロリーです。

焼き鳥(塩)1本あたりのカロリー・栄養素

種類 

カロリー(kcal) 

たんぱく質(g) 

脂質(g) 

ささみ 

40 

7.9 

0.2  

むね(皮つき) 

53 

6.9 

2.2   

むね(皮なし) 

42 

7.7 

0.6  

もも(皮つき)  

76 

6.9 

5.4  

砂肝  

34 

6.2 

0.5  

なんこつ  

22 

5 

0.1  

レバー  

40 

6.4 

0.8  

はつ   

74 

4.9 

5.3  

皮  

186※1 

2.5 

19.2  

ぼんじり 

170 

2.1 

18  

つくね  

100 

5 

5  

手羽先※2 

124 

9.8 

8.2  

※1 皮は生の状態のカロリーです。調理後はこの数値よりも減少します。 
※2 手羽先は1本あたり60gとした場合の数値です。 
八訂食品成分表2025(女子栄養大学出版部)より推計 

おすすめの焼き鳥

まずは、なんと言ってもささみです。ささみは鶏肉の部位の中で一番脂質が少なく、たんぱく質が多いので、おすすめです。 

続いてむね肉も、皮つきと皮なしでカロリーが変わりますが、皮なしの場合は脂質が少なく、たんぱく質が豊富です。 

鶏肉には疲労回復物質・イミダペプチドが含まれていますが、特に活動量が多いむね肉には多く含まれています。疲労回復を狙うならむね肉、たんぱく量を重視するなら、ささみを選ぶとよいと思います。どちらも1、2を争うおすすめ部位です。 

もも肉は、むね肉よりもカロリーも脂質も多いということはご存知の方も多いと思いますが、焼き鳥にすると脂が落ちるため、他の調理法に比べるとヘルシーに食べられます。もも肉を食べるなら、ねぎまがおすすめ。野菜が入ると当然、1本当たりの脂質もカロリーも落ちますし、鶏肉に含まれていないビタミンやミネラルが補えるという利点もあります。 

また、砂肝やなんこつもカロリーが低いです。特になんこつは低脂質・高たんぱくなのでおすすめです。 

最後に、特に女性におすすめしたいのがレバーです。レバーは鉄分とビタミンAが豊富なので、積極的に摂取してもらいたいですね。 

【おすすめの焼き鳥】 
ささみ/むね肉(皮なし)/ねぎま/砂肝/なんこつ/レバー 

控えめにしたい焼き鳥 

皮やぼんじりは、脂質が多くカロリーも高くなります。 

また、つくねに使う鶏ひき肉は、もも肉やむね肉のほかに皮も一緒に挽いているので、脂質もカロリーも高くなりがち。手羽先も、皮がついたまま調理するので、当然脂質もカロリーも高くなります。 ダイエットや健康を気に掛ける方は、これらの摂りすぎに注意しましょう。 

【控えめにしたい焼き鳥】 
皮/ぼんじり/つくね/手羽先 

味付けを選ぶなら、塩? タレ? 

「焼き鳥は塩のほうがヘルシー」となんとなくイメージしている方も多いかもしれません。実際、タレよりも塩のほうがカロリーは控えめです。 

ただ、焼き鳥を食べるときに気をつけたいのは、実はカロリーよりも塩分。塩分を摂りすぎると体内の塩分濃度が上がり、それを下げようと体が水分をためこむため、結果的にむくみやすくなってしまいます。 

1日の塩分摂取の目安は、成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満。焼き鳥1本あたりの塩分量は0.2〜0.5g(塩・タレ含む)なので、焼き鳥を10本食べれば2〜5gの塩分を摂ることになる計算です。 

肉全体にしっかり絡むタレよりも、部分的に味をつける塩のほうが塩分量は控えめ。カロリーも塩分も、塩のほうが軽いというわけですね。 

とはいえ、「せっかくの焼き鳥、やっぱりタレも食べたい!」という方も多いはず。そんなときは、タレと塩の串をうまく組み合わせて味にメリハリをつけるのがおすすめです。 

1日あたりの適量

先ほどの表にある「焼き鳥1本あたりのカロリー」はあくまで目安ですが、小さめで、脂の少ないものであれば平均して「1本50~60kcal」と覚えておくと、計算しやすいかと思います。 

この目安をもとに考えると、焼き鳥を10本食べた場合のカロリーは約500~600kcal。また、前述の通り、塩分も10本で2~5gほど摂取することになります。そのため、健康を意識するなら10本程度を上限の目安とするのがよさそうです。さらに、10本のうちに野菜串をいくつか取り入れると、よりバランスの取れた食事になります。 

もちろん、摂取カロリーの適正量は性別や体格、活動量などによって異なりますので、ご自身の食生活に合わせて、無理なく食べていただくのがいいと思います。 

焼き鳥と相性のよいメニュー

焼き鳥は低脂質・高たんぱくで、カロリー控えめの優秀な料理ですが、先述の通り、塩分の摂取量は多くなりがち。また、ビタミン・ミネラル・食物繊維が不足しやすい点にも注意が必要です。そこで取り入れたいのが、塩分を排出する働きのあるカリウムを豊富に含み、栄養素も補える「生野菜」です。 

メニューとしては「生野菜スティック」がおすすめです。キュウリやニンジン、大根などの組み合わせが定番ですが、カリウムをしっかり摂れるうえ、特にニンジンにはビタミンも豊富で、栄養バランスが整いやすくなります。ちなみに、同じ野菜でも漬物は塩分が多いため、やはり生で食べるのがベターです。 

また、先ほど野菜串を組み合わせるとよいとお伝えしましたが、なかでも注目したいのが“ししとう”です。 

ししとう串

ししとう串1本あたりのカロリーは10kcal程度(5本・30gの場合)。ビタミンCやβ-カロテン、食物繊維が摂れるほか、美肌効果が期待されるビタミンPも含まれています。 

さらに、野菜ではありませんが、不足しがちな栄養素を補うという点では“うずらの卵”もおすすめです。うずら串のカロリーは50kcal(3個・30gの場合)。高たんぱくなうえ、ビタミンAやビタミンB2、B12、葉酸などを豊富に含みます。ビタミンB群は、疲労回復やエネルギー代謝の促進、睡眠をサポートする働きがあるとされています。 

そのほか、ささみのしそ巻きなど、野菜と組み合わせた串を積極的に選ぶのもよいでしょう。 

さらにヘルシーに楽しむには? 

焼き鳥はたんぱく質が豊富なので、いわゆる「ベジファースト(野菜を先に食べる)」は意識しなくても大丈夫です。たんぱく質の多いささみやむね肉から食べるのがおすすめですが、好きな部位からでも構いません。 

大根おろしなどがセットになっている場合、醤油はかけない方がベター。焼き鳥は塩分量が多いことを意識しておきましょう。 

また、夜遅くに食べる場合は特に、締めの一品は控えたほうがいいでしょう。先述の通り、焼き鳥は低脂質・高たんぱく・カロリー控えめの “ギルトフリー”なメニュー。締めにラーメンや親子丼など、塩分・カロリーの高いものを食べてしまうと少しもったいないですね。どうしても食べたい場合は、お茶漬けやおにぎりを選ぶと◎。デザートを食べるなら、ビタミン、ミネラルが豊富なフルーツがおすすめです。 

焼き鳥を楽しんだ翌朝は、「洋食」にしてみるのもひとつの手です。

トースト

実は、和食よりも洋食の方が総じて塩分量が少ない傾向にあります。和食は白米に味がついていないため、味の濃いおかずやお味噌汁などがセットになりがち。一方で、洋食のパンはもともとほんのり塩味があるため、トーストするだけでも満足感があります。 

また、ビタミン、ミネラルが豊富なフルーツに、カリウム、カルシウムが豊富なヨーグルトを加えたフルーツヨーグルトを摂るのもおすすめです。 栄養バランスは、3日間程度のトータルで考えると整えやすいです。だからこそ、焼き鳥を楽しんだ翌朝の食事にも、少し気を配ってみてくださいね。 

一緒に飲むならこのお酒 

“ギルトフリー”な焼き鳥なので、1杯目はビールで乾杯もアリだと思います。ですが、ビールや日本酒などの醸造酒は糖質が多く含まれているため、飲みすぎには注意が必要です。 

せっかく焼き鳥を食べているのなら、やはり糖質が少ない蒸留酒がおすすめです。「いいちこ」をはじめとする焼酎などを、ノンカロリーの水やお茶、炭酸水などで割ったものがいいですね。 

なかでもおすすめは、「生絞りレモンサワー」。焼酎+炭酸水+生レモンの組み合わせなら、糖分が加わらず、レモンからビタミンCも補えます。レモンの代わりに、かぼすなどの生の柑橘類を使ったサワーもよいでしょう。 

レモンサワー

また、焼酎のような“食中酒”は、一口ごとに口の中をリセットしてくれるので、焼き鳥のおいしさがいっそう引き立ちます。味わいの面でも、相性のよいお酒といえるでしょう。

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焼き鳥+生野菜スティック+フルーツヨーグルト 

この組み合わせなら、焼き鳥の魅力である“低脂質・低カロリー”をキープしながら、不足しがちな、ビタミン、ミネラル、カリウム、カルシウムをしっかり補うことができます。 

おいしさも、健康面でも優秀な焼き鳥。この記事を参考に、よりヘルシーに楽しんでみてくださいね。 

※記事の情報は2025年10月24日時点のものです。