「いいちこ」づくりの大ベテラン・丸尾剛さんが、全国各地の“酒場メシ”を食す! 今回訪れたのは、食の街・築地で100年看板を掲げ続けてきた『築地玉寿司 築地本店』さん。江戸前寿司の神髄とも言うべき「づけ鮪と煮穴子のにぎり」を「いいちこ深薫」のお湯割りと一緒にいただきます!
“酒場メシ”ハンター
丸尾 剛(まるお つよし)
三和酒類株式会社 SCM本部所属
39年の焼酎づくりのキャリアを生かし、社内の若いつくり手たちのスキルアップをサポートする「焼酎づくりの先生」。普段家で飲むのは、もっぱら「いいちこ20度」か「いいちこ日田全麹」。最近、麹を使った調味料づくりにハマッている。
築地で100年! 江戸前の仕事を心ゆくまで堪能できる『築地玉寿司 築地本店』
東京湾に近く、かつては日本を代表する魚河岸のある街として知られていた東京・築地。2018年に場内市場が豊洲に移転した後も、“食の街”として変わらぬ活気にあふれています。
丸尾さんが訪れたのは、そんな築地で愛され続ける『築地玉寿司 築地本店』さん。創業は関東大震災の翌年の大正13年(1924年)。来年3月に100周年を迎える老舗です。
季節の寿司種が美しく並ぶネタケース、清められた板場できびきびと働く職人たち。親しみやすさはありつつも、「寿司屋に来た!」という気分が高まる雰囲気です。
「丸尾さん、いらっしゃいませ」。柔らかな面差しで迎えてくれたのは、店長の伊藤晃寛(いとうあきひろ)さんです。
伊藤店長をはじめ『築地玉寿司』の職人たちがにぎるのは、創業時からの技が継承された江戸前寿司。ここで言う「江戸前寿司」とは、魚を酢でしめたり、煮たり、漬けにしたりといったひと手間をかけたにぎり寿司のこと。職人がどういう“仕事”を施すかでその店の味が決まり、その仕事に客がつきます。
伊藤「場所柄、国内外から幅広い年齢層のお客様がお見えになりますが、特にここ本店には昔からのご常連さんが今もたくさん来てくださいます」
現在は首都圏や札幌、名古屋に31の直営店を構える『築地玉寿司』。一部の店舗では、職人がシャリ切りや寿司のにぎり方をレクチャーする、江戸前の寿司文化を肌で感じられる体験コースも用意されています。
『築地玉寿司』の真価が発揮される「づけ鮪と煮穴子のにぎり」
そんな『築地玉寿司 築地本店』で、職人の手から手へと技が受け継がれているのが「づけ鮪と煮穴子のにぎり」です。
「づけ鮪のにぎり」は、秘伝のたれで漬けにした本マグロを赤酢のシャリと合わせたもの。仕上げに本わさびをのせ、柚子の皮を散らします。
伊藤「ウチでは、たれに入れる出汁をカツオ節じゃなくてマグロ節でとっています。そうすると、たれがちょっとトロッとなって、漬けにしたマグロがより濃厚な味になるんです」
たれに漬けるのはせいぜい1分くらい。さっと引き上げて、目に留まらぬ鮮やかさでにぎられます。
丸尾「では、いただきます」
丸尾「うーん。程よい弾力をもったマグロから旨味が広がります。たれがキリッとしていながらも強すぎず、いい漬け具合です。そして、後からワサビと柚子の爽やかな香りが鼻からふわーっと抜けていきますね」
にぎりにとともに味わうのは、料飲店向けにつくられた「いいちこ深薫」のお湯割り。
丸尾「めちゃくちゃ合います。『いいちこ深薫』はとりわけ麹が贅沢に使われた商品なので、同じ麹の力を借りてつくられる醤油のたれに馴染むんですね」
次は「煮穴子のにぎり」。長崎県産の穴子を、醤油や酒、みりんを合わせた出汁で10分ほど煮て、ふっくら仕上げます。
伊藤「この出汁も継ぎ足しなので、一長一短ではできません。毎日毎日穴子を煮て、その出汁で炊くからこそウチの味が出るんです」
仕上げに、その煮汁を煮詰めたツメ(たれ)をひと刷毛。
丸尾さん、にぎりたてを間髪入れずに頬張ります。
丸尾「穴子がふわふわ。こたえられませんね。ちょっと炙ってあるから香ばしさもあります」
そして、「いいちこ深薫」のお湯割りを重ねます。
丸尾「うんうん。『深薫』はカラメルのような甘い香りと香ばしさをもっているので、炙った穴子や甘辛く煮詰めたツメに合います」
『築地玉寿司』の真骨頂とも言うべき二貫を堪能した丸尾さん。伊藤さんに「寿司のおいしさを決める一番大切な要素は?」と尋ねると…。
伊藤「もちろんネタも大事ですが、やっぱり一番はシャリですね。シャリがおいしくないと、ネタがいくら上質でもおいしい寿司にはなりません。人肌くらいの温かさで、口に入れた途端にほろっと米粒が広がるのが理想的です。そのためには水加減も大事ですが、米を炊き上げてすぐ熱いうちに酢と合わせて、粘りが出ないよう手早くシャリ切りし、冷めないうちにおひつに移すことが大切です」
丸尾「なるほど。時間軸と温度軸が大事なんですね。焼酎づくりに似ています。おそらくマニュアルには載らない、経験と感覚がモノを言うところなんでしょうね」
揚げたてが最高! 『築地玉寿司』人気No.1おつまみ「手ごねさつま揚げ」
次に伊藤店長がおすすめしてくれた一品が、来店客のほとんどが注文するという人気No.1おつまみ「手ごねさつま揚げ」です。
伊藤「白身魚のすり身にエビやタコ、イカゲソなどの魚介とゴボウを練り合わせて蒸し、注文が入るたびに揚げています。店で種から手作りしているのでおいしいですよ」
丸尾「揚げたて、最高です。海鮮がゴロゴロ入っていて、ゴボウの香りも風味豊かで。九州でさつま揚げというと甘めに味付けされたものをイメージしますが、こちらのはあっさりとして、いくらでも食べられそうです」
揚げものには、口当たり爽やかな「いいちこ深薫」のソーダ割りを合わせます。
丸尾「さつま揚げに『深薫』のソーダ割りを合わせることで、互いのふくよかさが増しますね。『深薫』は常圧蒸留原酒を使っているので、特有のボリューム感や香ばしさがあって、余韻も長く続くんです」
聞けば、『築地玉寿司』で提供されるお酒はすべて社長の中野里陽平(なかのりようへい)氏が実際に試飲し、「寿司に合うかどうか」という基準で厳選しているのだそう。「いいちこ深薫」もそのうちの1つです。
伊藤「とても親しみやすいお酒ですよね。力強い赤身の魚だけじゃなくて、繊細な白身魚にも合いますし。一緒に飲んでも魚の味がなくならないっていうのは、寿司屋としてはありがたいです」
丸尾「『深薫』は“あらゆる料理に合うこと”を重視してつくった焼酎です。深い味わいを目指しながらも、最後の仕上げのところで飲み飽きない工夫もしていて。つくり手の技術が詰まっているので、伊藤さんにそこを評価していただけて本当に嬉しいです」
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焼け野原から店を立て直した2代目“こと”の思いは、今も『築地玉寿司』の糧に
100年続く『築地玉寿司』の歴史を語るときに、触れずにはいられない人物がいます。初代・中野里栄蔵(なかのりえいぞう)の妻で、二代目の中野里こと(なかのりこと)です。
創業当時、ことは縁の下の存在として夫の商いを支えていましたが、栄蔵が昭和20年(1945年)に病で死去。その年の3月には東京大空襲で店も住まいも消失してしまいます。残されたのは、4人の子供と「玉寿司を頼む」という夫の最期の言葉だけ。
当時は、女性が寿司をにぎるなど考えられなかった時代です。ですが、「なんとしてもお客様にまた来てもらいたい」と考えた彼女は日本初の女板前として自ら板場に立ち、『築地玉寿司』の再建に尽くします。
伊藤「戦後の焼け野原から、寿司の世界で女性が店を盛り立てていくのは並大抵のことではなかったと思います。食糧難で十分なネタが入らないときは、野菜をにぎっていたこともあったそうですから。でも、その苦しい時代を知っているので、私たちもこのコロナ禍を乗り越えられたんです」
ことが守り抜いた思いや苦難から得た経験は、そのまま『築地玉寿司』の糧となり、今の職人たちに受け継がれていると伊藤さんは話します。
伊藤「いつも心掛けているのは、お客様に笑顔で帰っていただくことです。ただ寿司をにぎるだけだったら、少し勉強すれば誰にでもできます。目配り・気配りの行き届いた接客や店内空間でお客様を迎える。これからも『どこに行っても玉寿司はおいしいね』『感じがよくて楽しい時間が過ごせるね』と思っていただくことが、私たちの目指すところです」
そんな『築地玉寿司 築地本店』さんを訪れて、丸尾さん、いかがでしたか?
丸尾「店を100年続けるって、言うは易しで簡単なことじゃないんですよね。さまざまな経験をしながらも、その時の知見がしっかり次の世代に伝承されている。そして、何のためにそれをやるかと言えば、やはり“お客様のため”。『玉寿司』さんの100年には、学ぶところがたくさん詰まっていました」
今回お世話になったお店はこちら!
『築地玉寿司 築地本店』
東京都中央区築地1-9-4
TEL:03-3541-1917
営業時間:11:00~15:00、17:00~22:00(L.O.21:30)
定休日:無休
※記事の情報は2023年12月26日時点のものです。