いつ、どこで飲んでも安心できる「いいちこ」の味。当たり前のようなことですが、その変わらないおいしさをお客様にお届けするために、三和酒類では分析装置による検査に加え、人の五感を大切にしながら、日々、徹底した品質チェックを行っています。その取り組みについて、品質保証部の今永が詳しくご紹介いたします。
華やかな香りと続く余韻で、40年以上支持される「いいちこ」
“下町のナポレオン”でおなじみの麦焼酎「いいちこ」は、1979年の誕生以来40年以上お客様にご愛顧いただいている、三和酒類の顔ともいえる商品です。
「いいちこ」の誕生は、そのすっきりとした飲みやすさと香りの良さで、それまであった「焼酎=クセが強いもの」というイメージを大きく変えました。
口に含んだときに広がる華やかな香り、水で割っても味がしっかりと伸びていく感じ。そうした特徴が「いいちこ」のおいしさとして支持されており、今や一升瓶換算で年間約3500万本*の「いいちこ」が出荷されています。
安定した品質の焼酎をつくり、お客様に最高の商品をお届けすることを第一に考える。それがお客様に満足いただけること、お客様から信頼を得られることに繋がります。
*三和酒類の焼酎年間出荷数量(2019年1月~12月)
長年の知恵とノウハウに培われた品質管理体制
「いいちこ」づくりは、まず良い大麦を仕入れることから。「いいちこ」には主にオーストラリア産の大麦を使いますが、土地が広大なオーストラリアでは、同じ品種の麦でも地域や生産年度の気候により出来具合が大きく変わります。そのため「いいちこ」に適した麦の粒の大きさや柔らかさといった選定条件をあらかじめ設定し、それを満たした最適な大麦を仕入れるようにしているのです。
同じように、麹づくり、もろみづくり、蒸留、そして完成した焼酎の充填など、各工程に細かな基準の幅を設けて、その基準に入るように製造・生産をコントロールしています。焼酎づくりの全工程に何十か所もの「関所」を設けて、ひとつひとつクリアすることで、間違いのない商品をお客様へ提供しています。
とは言え、「いいちこ」誕生当初から、このような徹底した管理体制が確立されていたわけではありません。焼酎は、大麦と大麦麹を原料に、麹菌や酵母などの微生物の働きのおかげでつくられるもの。自然が相手なので、それらをコントロールすることに苦労していた時期もありました。
そうした経験を、我々が入社する前の先輩たちが課題としてひとつひとつクリアしていき、そこで積み重ねられた知恵やノウハウが、今の三和酒類の品質管理体制に活かされているのです。その結果、生産のコントロール技術もさらに向上し、品質レベルの高い焼酎が安定してつくれるようになりました。
最終関所は「味覚パネリスト」による毎日の官能検査
完成した焼酎原酒はタンクや樽に入れられ、一定期間貯蔵された後、複数の原酒をブレンドし、「いいちこ」になります。その後、瓶詰されて出荷されます。その瓶詰される前の焼酎が、間違いなく「いいちこ」である、ということを確認するため、分析装置による検査と、人の五感を使った官能検査(きき酒)を行っています。
分析装置では、「導電率」や「吸光度」などを検査します。導電率の検査では、電気の通りやすさを調べており、いつもと同じ品質にできているか、異物の混入がないかを確認しています。吸光度の分析では、設計品質が規格範囲内に入っているか、色調が法令の数値内に入っているかなどを分析しています。こうした分析機械を使うメリットは、何回検査を繰り返しても疲労せず、正確な分析結果を出せる点です。
一方で、人の五感を使った官能検査には、人による感度の差や体調によるバラツキなどありますが、機械では測定しにくい成分の香味を感じ取ることができたり、それを言葉に置き換えることができるというメリットがあります。
官能検査では、「味覚パネリスト」という資格をもつ社内のメンバーが10人以上集まって、日々つくられるお酒を、前回検査に合格した基準となるお酒と比較しながら検査を行います。口に含んだ時に広がる味わい、立ち上がってくる香り、見た目などに差異がないかチェックします。10名以上で評価する仕組みにしているのは、参加者個人の判断だけでなく、統計的な視点を加え差異がないか確認するためです。
この出荷前の官能検査は、間違いのない焼酎をつくったことを確認する、いわば瓶詰する前の品質の最終関所のようなもの。我々が最も大事にしている検査です。
全ての焼酎づくりに「味覚パネリスト」の活躍あり
「味覚パネリスト」は、全社員を対象に年2回行われる「味覚パネリスト審査会」で一定以上の点数を取った人の中から認定され、審査会での点数により、1級と2級にランク分けされます。ちなみに社員数約370名のうち、2019年は、1級に67人、2級に20人が認定されました。
「味覚パネリスト審査会」の試験は、以下の3つの検査方法で行います。
①「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」「無味」がきちんと識別できるか
②「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」の味の濃さを4段階で順位づけできるか
③市販焼酎(麦、米、蕎麦、芋)が区別できるか
傾向としては、特に②の「酸味」「苦味」の濃度の並べ替えに苦戦する人が多いようです。
この試験、当然、普段製造現場にいる人のほうが有利だろうと考えられがちですが、実際はそうとも限りません。営業部などにも特異的に感度の高い人がいたり、アルコールが苦手な人ほどちょっとした差異を察知するといったケースもあり、そういう人の存在は会社にとって貴重です。
また「味覚パネリスト」の五感は、出荷前の官能検査だけでなく、新商品の開発や、既存商品をリニューアルする際にも役立てられます。開発担当が焼酎をつくり上げていく最終調整段階で「味覚パネリスト」も含めた試飲会を行い、その酒質が食事に合うか、お客様を満足させるものになっているかなど、意見を出し合いながら製品に仕上げていきます。
このように「味覚パネリスト」は、おいしい焼酎をつくる上でも、それを守り続ける上でも、必要不可欠な存在なのです。
社員全員が「酒のつくり手」としてのこだわりを
「味覚パネリスト審査会」は、1985年にスタートした歴史のあるものです。1979年に「いいちこ」が誕生してから6年後に始まり、以来35年この制度を継承し続けています。
全社員を対象に行っている理由は、一人一人が「酒のつくり手」としてのこだわりを忘れないためです。
お客様に対して、安全で安心なもの、最高の商品をお届けするにあたって、つくる側の人間の味覚や五感が優れていないと、お客様に選んでいただけるような商品はつくれない、というのが創業当初からの考えでした。
私も会社に入って1年目は製造の現場から離れた営業部にいたのでわかるのですが、「味覚パネリスト」の資格をもつことで、自分の言葉に説得力が増し、それがお客様からの信頼につながる部分もあると思っています。
こうした酒づくりに対する社員一人一人の自覚や、徹底した品質管理体制を土台として、「いいちこ」のおいしさは明日に受け継がれています。
※記事の情報は2021年1月26日時点のものです。