いまや全国区となった大分県を代表する調味料「柚子ごしょう」。その材料として欠かせない青柚子と青唐辛子が手に入るのは今だけ! そこで、“マダムゆず”ことフードアドバイザーの神谷禎恵さんに、多くのトップシェフや食通たちをも虜にした、絶品柚子ごしょうの作り方を教えていただきました。
この方に教えていただきました!
神谷 禎恵(かみや よしえ)さん
大分県宇佐市出身。母が設立した「生活工房とうがらし」を、2015年に株式会社生活工房とうがらしとして継承し、食を軸として様々な活動を展開。趣味はおにぎりを握ること。食のブランディングや地域の食を伝える活動を行っている。Facebookページの『ごはん大好き』は世界に6万人のフォロワーを持つ。
大分県を代表するもうひとつの柑橘「柚子」
大分県で生産される柑橘といえば、以前こちらの記事でもご紹介した「かぼす」が有名ですが、実は麦焼酎「いいちこ」を展開する三和酒類本社からほど近い宇佐市院内町は古くから柚子の栽培に力を入れてきた地域です。
神谷「院内町の柚子畑は山際にあって、玖珠(くす)山系が育む水が土地を豊かにうるおします。そして遠く周防灘(すおうなだ)から平野を渡ってきた気持ちの良い風が、山に上ってきてふわっと吹く。こういう水と風に恵まれた環境だから素晴らしい柚子ができるんです」
教えてくれたのは、“マダムゆず”の愛称でも知られるフードアドバイザーの神谷禎恵(かみやよしえ)さん。生産者の高齢化などの影響で一時下火になりかけた院内町の柚子栽培を盛り上げようと、2008年に大分県庁やJA大分などと「ゆずプロジェクト」を発足。以来、さまざまな場所で柚子ごしょう作りのワークショップを行ったり、柚子ごしょうキットを販売したりして、院内町の柚子の魅力を発信し続けています。
ほかの調味料にはない「柚子ごしょう」の魅力とは?
柚子ごしょうは、もともと間引きのために摘果した青い柚子を「もったいない」と思った農家のお母さんたちが、青唐辛子と塩で合わせて保存食にしたのがはじまり。地元大分では昔から、青柚子と青唐辛子の旬がちょうど重なる9月の約1か月間に柚子ごしょうを仕込み、それを鍋物の薬味として使ったり、味噌汁に入れたり、刺身につけたりして楽しんできました。
神谷「柚子ごしょうは辛味や塩味以外にも、ほかの調味料があまり持っていない『香り』や『心地よい苦味』も持ち合わせた調味料です。人間は、五種類の味(酸味、苦味、甘味、辛味、塩味)が調和したものをおいしいと感じますが、柚子ごしょうは砂糖や塩、酢などでは補えない『苦味』や『香り』も料理に加えることができます。だから重宝する調味料として全国にも広まっていったのではないでしょうか」
柚子ごしょうの醍醐味である「香り」や「心地よい苦味」を最大限に引き出すには、柚子の旬の見極めが何より大事、と神谷さん。“マダムゆず”こだわりの手作り柚子ごしょうは、名だたる料理人や美食家にも知れ渡り、日本のフレンチ界を牽引するトップシェフも柚子ごしょう作りを体験しに、宇佐市にある神谷さんの工房を訪ねてきたことがあるほど。
そんな神谷さんの究極の柚子ごしょう、作り方を詳しく教えていただきました!
【自家製柚子ごしょう】必要な材料と道具、柚子の見極め方
材料はたった3つ、青柚子と青唐辛子、塩だけ。作り方も意外とシンプルで、フードプロセッサーで材料を細かくしたあとに、さらにすり鉢であたってなじませていきます。
材料
・青柚子・・・7~8個(皮をむいて200gほど)
・青唐辛子・・・50~60g(柚子皮の重量の3/1~4/1)
・塩(A)・・・32~36g(柚子皮の重量の16~18%)
・塩(B)・・・8~10g(唐辛子の重量の16~18%)
道具
・フードプロセッサー
・すり鉢、すりこ木
・保存瓶(消毒しておく)
POINT! 青柚子と青唐辛子の選び方
青柚子はできれば直径7~10cmくらいの大きさで、皮にハリのあるフレッシュなものを選びましょう。皮を触ってみて少し弾力あることが見極めポイントです。人間でいうと『青春時代』にいるような青々とした柚子が良いでしょう。そうした柚子は、皮に爪を立てるとプシュッと香りがほとばしります。
青唐辛子は、ある程度大きくなってパンパンにハリがあるものがおすすめです。生でかじった時にピリリと辛いだけでなく、旨味も感じられるくらいの辛さのものを選ぶと良いでしょう。ちなみに下向きに実をつけた唐辛子は辛さが比較的マイルドです
※青唐辛子を扱った手で、顔や目、粘膜などに触れると大変危険です。取り扱いには十分ご注意ください。
【自家製柚子ごしょう】作り方とおいしさの秘訣
1. 青柚子の皮を果肉ぎりぎりまで厚めにむき、200g分用意する。適当な大きさに刻んでおく。
良い青柚子は皮の内側の白い部分もおいしく、そこも使うことで柚子ごしょうの味に幅や奥行きがでます。ただし、なかには苦みやえぐみの強いものもあるので、白い部分を少し食べてみて、大丈夫そうだったら皮を厚めにむいてください
*残った青柚子の果実部分は、半分に切ってお酢に漬けると柚子酢として楽しめます。
2. 青唐辛子のヘタを落として縦半分に切り、中の種を取り除く。
青唐辛子の中の白いワタにも旨味があります。種だけ取り除いて、ワタは残すようにしましょう
3. 1の柚子皮と、柚子皮の重量の16~18%の塩をフードプロセッサーにかける。十分細かくなったら取り出し、すり鉢に移しておく。
4. 続けて、2の青唐辛子と青唐辛子の重量の16~18%の塩をフードプロセッサーにかける。
5. 3のすり鉢に4で細かくした青唐辛子を少しずつ入れて、すりこ木でする。ときどき味を見ながら、好みの辛さに調整していく。
6. 全体が馴染んでしっとりしたら完成! 保存期間は冷凍・冷蔵で半年が目安です。
【自家製柚子ごしょう】おいしい楽しみ方いろいろ
神谷「柚子ごしょうは長期保存が効く調味料ですが、できたてのフレッシュなおいしさは、手作りした人だけが楽しめる贅沢な味です。まずは柚子の鮮烈な風味が生きている3時間以内にぜひ食べてみてください!」
神谷さんおすすめの楽しみ方は、肉料理に添えるほか、卵かけごはんやおにぎりにトッピングしたり。もっと意外なところでは、バニラアイスクリームに添えても柚子の爽やかな香りと青唐辛子のピリっとした辛味がアクセントになっておいしいそうです。また、上の写真のように、クリームチーズやビターチョコレートに柚子ごしょうを添えると焼酎にも合う粋なおつまみに。
さらに、“いいちこアンバサダー”さんからも、柚子ごしょうを使ったこんなアイデアが。
この投稿をInstagramで見る
こちらは先日行われた「いいちこアンバサダーオンライン交流会」で紹介された、いいちこの“新しいお茶割り”に柚子ごしょうを加えるという楽しみ方で、「お茶の香りに柚子が合わさって爽やか」とのこと。いいちこのお茶割りは、過去にご紹介した「究極のお茶割り」方式でも作れます。ぜひ、試してみてください!
※記事の情報は2021年9月21日時点のものです。