「お茶割り」の人気がじわじわ高まっています。今回はお茶割り専門店「茶割」(学芸大学/目黒)を運営する株式会社サンメレの代表取締役・多治見智高さんに、お茶割り専門店をはじめたきっかけや、お茶割りの魅力やいいちこに合うお茶割りについてもお聞きします。

この方にお聞きしました

株式会社サンメレ代表取締役・多治見智高さん

多治見智高(たじみ ともたか)さん
株式会社サンメレ代表取締役。1990年、東京都生まれ。慶應義塾大学在学時よりデザインやマーケティングを手がけ、卒業後はバイオリン奏者としてアーティスト活動を行う。演奏していたお店を譲り受ける形で飲食店経営をはじめる。2016年にお茶割りの専門店「茶割」をオープン。2021年に立ち上げた一般社団法人日本お茶割り協会の代表理事も務める。

お茶割り専門店「茶割」をはじめたきっかけ

―どんなきっかけでお茶割り専門店をやられることになったのでしょうか?

2014年から飲食事業をやっているんですが、2年半経ち次の出店が見えてきて、強いコンセプトを探していました。タイミングとしてはハイボールが既にブームで、レモンサワーがどうやら流行りそうという時期だったんです。もう1個くらい、言ってしまえば“おじさんドリンク”として認識されていたものが、さらに大衆化というか、主要キャラになるみたいなことがあるんじゃないかと。

で、候補に挙がったのがお茶割りとトマトハイと梅干しサワーだったんです。どれを深掘りしていくかと考えたときに、トマトや梅干しよりお茶の方が、僕には身近な存在だったので、お茶割りをやってみよう、と計画を練り始めたのが一番最初のきっかけですね。

―元々お茶割りはお好きだったのですか?

実家がコーヒーを飲まない家庭で、起きたときや食後にお茶をいれて飲むことが日常だったので、子供の頃からお茶自体にかなり親しみがありました。

大人になって、新宿のゴールデン街などの飲み屋街へ飲みに行くようになったら、飲むものがウイスキーか焼酎のほぼ2択なんですね。実はそれまでは焼酎は苦手だったんですけど、どうやらボトルを入れてる人たちが焼酎をお茶で割って飲んでいると気づいて、お茶はもともと好きなんで飲み始めたら、段々お茶割りが好きになって。

ゴールデン街で飲むざっくばらんなお茶割りも好きですが、自分たちがお店で出すなら、茶葉からいれたお茶で作った方がもっと面白くできるかなと。「茶割」ではすべて茶葉からいれたお茶を使っています。

多治見智高さん

―「茶割」さんは若い世代のお客様も多いようですが、お茶割りに対しての反応はいかがですか?

「茶割」で初めてお茶割りを飲んで、他のお店でもお茶割りを飲むようになりました、という声はちらほら聞きますね。今までお茶割りを飲んでこなかった層の開拓が出来ているんじゃないでしょうか。

―お茶10種×お酒10種の掛け合わせで100種のメニューを提供されていますが、その仕組みを思いついたのはどんな経緯だったのでしょうか?

2016年頃から始まったレモンサワーブームって、各店が“究極のレモンサワー”を作って競う、という形だったと思うんです。一方でお茶割りは、お茶の種類は無限にあるし、何で割ってもいいので広がりを出せるなと。

僕自身、ウイスキーバーやアブサンバーといった、同じカテゴリーのものがめちゃくちゃ種類があるような店が好きで、お茶割りはレモンサワーのように究極の方向性を目指すより、そっちのほうがいいんじゃないかと。

多くの人が種類がいっぱいあると思ってもらえそうなのは100種類じゃないか、それを居酒屋のオペレーションに落とし込むとしたら…、小学生がやる“100マス計算”のようなメニューにならいけるな、とお茶10種×お酒10種の形になりました。

茶割 目黒のおつまみ
おつまみメニューもユニーク。(手前から)100種の唐揚げから「もも×ゴルゴン紅茶」、抹茶のうまみを引き出す「緑すぎるポテサラ」、出汁のジュレで味変できる「茶葉と鯛の煎茶漬け」

お茶割りの魅力とは?

―お茶割りはどんなところに魅力があると思われますか?

無限に種類があるところじゃないでしょうか。家で飲むお茶割りなら、同じ茶葉でもいれ方で味を変えられます。他の飲み方よりパラメーターが多いので、好みやシーンに合わせてチューニングしていく楽しみがある。日本中でお茶が作られていて、ちょっとだけ手間をかければいろんな味が楽しめる世界があるよ、というのも魅力ですね。

―「茶割」さんではそれを体現されていますね。

店では無限というわけにはいかないので、茶葉にこだわりを持とうと考え、日本各地から厳選しています。日本茶の中でも煎茶、茎茶、ほうじ茶…日本で作られているいわゆる和紅茶もあります。いれ方の幅も楽しんでいただけるように、例えば鹿児島県の志布志市の和紅茶は、炭酸水で抽出して、炭酸紅茶として提供しています。

お茶割り

―2022年には「お茶割りを国民的ドリンクに~お茶のカクテルで、飲食店とお茶産業を盛り上げていく~」というメッセージを掲げた、一般社団法人日本お茶割り協会を立ち上げられたそうですね。

一般社団法人を立ち上げて、いろんなお店に我々が思うイケてるお茶割り、茶葉からいれるお茶割りをメニューインしてもらう活動をしています。

やってみて分かったのは、お店側はお茶をどうやって選んだらいいか分からない、お茶屋さんは居酒屋さんに売り込みたいけどできていない、お酒メーカーさんは次のブームを探してる。みんなが困っていることに対して、少しは知見の溜まった我々が解決の糸口になるかもしれないと。お茶割りのレシピの提案なんかもしています。

お茶と「いいちこ」の相性は?

―お茶と「いいちこ」の相性についてお聞かせください。

いま「茶割 目黒」にある10種のお茶で割ってみると、「鬼の白骨(おにのしらほね)」という狭山の奥富園さんの白棒茶が好みですね。緑茶のうまみとあまみを備えつつも、ほうじ茶のような香りの立つこのお茶が、相性抜群に感じました。個人的に、本格焼酎のあまさを感じられるようになると、酒飲みとして一段上がった気がするんですけど、その焼酎のあまさを、あまみのあるお茶がより感じやすくしてくれる、そんな効果があるように思います。

実は別の飲み方も試作してみたんですけど…。

―試作! ありがとうございます。ぜひ教えてください!

茶葉はうまみとコクが日本一とも言われる八女の煎茶を用意しました。作り方はこんな感じです。

1.急須に茶葉を入れ、65度くらいのぬるま湯を注ぎます。
2.1分半ほどおきます。
3.お茶6:いいちこ4の割合でグラスに注ぎます。

渋みや苦みがでないよう低い温度のお湯でいれるのがポイントです。「いいちこ」の丸っこい味わいをより楽しんでもらえると思います。

「いいちこ」のお茶割りを淹れる多治見さん

―あまみとうまみの相乗効果が楽しめるお茶割り、自宅でも真似できそうですね。本日はありがとうございました!

※記事の情報は2023年6月2日時点のものです。