コロナ禍で在宅時間が増加してはや2年、この生活スタイルが当たり前になった方も多いのではないでしょうか。この期間、飲酒は飲食店から家飲みへのシフトが進みました。本格焼酎飲用実態アンケートでは、そうした変化や、自宅で本格焼酎を飲む機会の増加が明瞭に現れました。とりわけ注目されるのは20代女性における麦焼酎の増加です。背景に何があるのかを探ってみましょう。

文/(株)酒文化研究所 山田聡昭

20代女性の3割が家飲みで本格焼酎が増加

最初に、家飲みでのここ数年間の本格焼酎の飲用頻度の増減を見てみましょう。全体では本格焼酎が「増えた」(「増えた」+「少し増えた」の合計)は22%にのぼり、「減った」(「減った」+「少し減った」の合計)の9%を大きく上回りました。

性別・年齢別に見ると「増えた」は20代女性でもっとも多く29%を占め、全体の22%を大幅に上回っています。反対に「減った」は60代男性で21%と最多です。また、「変わらない」という回答は男性に多く、特に30代、40代では過半数にのぼり、変化が大きかった20代女性や60代以上男性とは対照的です。

グラフ 本格焼酎の飲酒頻度の増減
図表 本格焼酎の飲酒頻度の増減

在宅時間の増加が本格焼酎の体験機会を増やした

なぜ、ここ数年で家飲みでの本格焼酎を飲む頻度が増えたのでしょうか? 

増えた&減った理由の回答(自由記述)を整理すると、在宅時間の増加が本格焼酎の飲用頻度増加に影響していることが浮かび上がりました。リモートワークの普及や出張頻度の減少などで在宅時間が長くなった結果、外での飲食機会が減り、飲酒は家飲みにシフトしました。

そこで「家飲みだから焼酎をグレードアップした」「(本格焼酎を)家でいろいろ飲み比べた」「店で飲んでいた焼酎を家で飲むようになった」という変化が生じました。また、パートナーや家族と一緒に飲む機会が増えたことで、「相手が本格焼酎を好き」「相手が好きな焼酎を一緒に飲んだらおいしかった」という声が多く寄せられました。

こうした変化は本格焼酎を自宅で楽しむ機会を増やし、「本格焼酎に目覚めた(おいしいと思うようになった、おいしいものに出会った)」というコメントにつながったと考えられます。どの酒類も飲酒機会をつくることがユーザーにとって大事な第一歩です。「プレゼントされた本格焼酎がおいしくて飲むようになった」という声も含めて、本格焼酎は在宅時間が長くなるという変化に適応して、成長機会を得たと言えそうです。

そのほか本格焼酎の「糖質ゼロ」「プリン体ゼロ」という本格焼酎の特性が、コロナ禍での健康意識の高まりから支持を集めた様子も窺われました。もちろん「アレンジしやすい」「コストパフォーマンスが高い」「飲みやすい」という基本的なベネフィットは成長要因となっています。

図表 在宅時間増加と本格焼酎の飲酒機会との関連性

家飲みで本格焼酎の飲酒頻度が増加した理由は?

●在宅時間が増えて焼酎が充実

コロナで飲み会、外飲みができないからおうち時間、家飲みを充実させたい!と思うようになって以前より良いお酒をお取り寄せするようになったから

おうち時間が増えた。お店で飲まなくなり外食が減った

家時間が増えて飲む種類も増えた!

外で飲まなくなった分、高価な焼酎をいただくようになった。贅沢な自宅バーである

●家族が焼酎好きで一緒に

嫁が焼酎好きで一緒に飲むようになり、飲まず嫌いだったと思った

彼が焼酎好きなので一緒に飲む機会が増えました!

親と飲む機会が増えたから、親が好きだから

息子と飲むから

●食事に合う・和食に合う

家では和食を作ることが多く、焼酎がぴったりだから

和食に合うので飲みやすくて好きです。焼酎の美味しさを知りました

●プレゼントで焼酎と出会い好きに

30歳になった記念に焼酎をいただいてから、焼酎にハマり、飲む回数も増えました

知人からもらって飲んだらおいしかったから

プレゼントでいただいて、おいしかったので飲むようになりました

●飲み方のバリエーションが豊富

いろんなアレンジで飲めて楽しめる

ソーダで割っても、水割りでも湯割りでも、なんでも合うから

割り方を色々試すようになった

●コストパフォーマンスがいい

ビールよりもコストパフォーマンスがいいからです

コスパが良くて太りにくいから

●ヘルシーだから

健康にいいと知ったから

旨くて低カロリー、 酔い覚めが良いから

糖質を気にして焼酎に変えた

●焼酎にハマった・おいしさに気づいた

今まで焼酎を飲む機会がなかったが、家飲みが多くなり焼酎に挑戦したところ飲み安くおいしい。料理にも合うことに気づきました

苦手意識のあった焼酎だけど、おいしいと思えるものに出会い、好きになってきたから

一方、本格焼酎の飲酒頻度が減少したというコメントで目立ったのは缶チューハイをはじめとする「RTD」(Ready To Drinkの略称で開けてすぐに飲める飲料のこと)への流出です。安価で簡便なRTDは10年以上2桁成長を続けています。「本格焼酎のように割る手間がかからない」という意見は複数寄せられました。そのほか「家では(酒を)飲まない」「わざわざ買ってまでして家で焼酎を飲まない」という声も寄せられました。

麦焼酎は「20代女性」と「30代男性」で大幅増

次に、ここ1年間での麦焼酎の飲酒頻度の増減(家飲み・外飲み問わず)を見てみましょう。

麦焼酎が「増えた」が12%、「減った」が7%で、増減差(「増えた」-「減った」)はプラス5です。「増えた」の全体の値(12%)を2割以上も上回る、増加が顕著な性別・年代別にセグメントは「20代女性(15%)」と「30代男性(17%)」です。増減差は「20代女性」がプラス11、「30代男性」はプラス15と大幅に増えていることがわかります。

反対に「減った」が顕著なセグメントは、「40代男性」「50代男性」「60代以上男性」の3つです。増減差は「40代男性」はそれでもプラス2と増加が上回り、「50代男性」はマイナス3,「*60代以上男性」はマイナス13の大幅減でした。(*60代以上男性はサンプル数が24人と少ないため参考値)

総じて麦焼酎は、若年層を中心に飲用頻度が増加しており、減少したのは50代以上の男性に限られます。

図表 麦焼酎の飲酒頻度の増減

麦焼酎の魅力は飲み方のバリエーションの豊富さ

では、麦焼酎はなぜここ1年で飲用機会が増えたのでしょうか。増加した理由を聞いたところ、「いろいろな飲み方を楽しめるから(7%)」が最多で、「経済的だから(6%)」「好みの濃さで飲めるから(5%)」と続きます。

麦焼酎は、すでに見た本格焼酎の基本的なベネフィットからユーザーから支持されていますが、飲み方のバリエーションの豊富さがストロングポイントとなっていることが窺われます。

グラフ 麦焼酎が増えた理由

本格焼酎の好きな飲み方は「ソーダ割り」がトップ

本格焼酎全体の話に戻ります。家飲みでここ数年飲用頻度が増加している本格焼酎ですが、どんな飲み方が好まれているのでしょうか? 

飲み方の例をあげて好みのものを選択してもらったところ(複数回答)、もっとも多かったのは「ソーダ割り」の14%でした。2番目は「水割り」で13%、3番目が「ロック・ストレート」の11%で、ここまでが10%を超えています。数年前からウイスキーハイボールやレモンサワーなどソーダで割る飲み方が人気ですが、本格焼酎もソーダ割りトレンドの渦中にあり、好まれるようになったことがわかります。

グラフ 本格焼酎の好きな飲み方

若年女性に支持される「コーヒー割り」

また、好みの飲み方には性別・年齢差が見られます。

全体の値よりも2割以上上回るセグメントを見ると、「ソーダ割り」「水割り」「ロック・ストレート」は30代から50代の男性で特に好まれていることがわかります。一方、30代から40代の女性では「レモンサワー」「お茶割り」「ジュース割り」「ジンジャーエール割り」「カクテル」など、果汁などのフレーバーを加えたミックスドリンクが好まれています。

そして、おもしろいことに「コーヒー割り」が20代・30代の女性だけに支持されています。コーヒーやコーヒーリキュールを使ったカクテルは人気がありますが、これまで本格焼酎をベースにしたものはほとんどありませんでした。

前述したように、麦焼酎は20代女性で過去1年の飲用頻度の増加が顕著でした。麦焼酎が支持される一番の理由が「飲み方のバリエーションの豊富さ」であったことと考え合わせると、「コーヒー割り」のような新しい飲み方が次々に登場しているところが、麦焼酎の飲用頻度アップにつながっているのかもしれません。

図表 本格焼酎の好きな飲み方

本格焼酎のおつまみ一番人気は「焼き鳥」

最後に本格焼酎の飲み方別に一緒に食べたいおつまみを見てみましょう。さまざまなおつまみを挙げて、前問の「好きな飲み方」で飲むときに食べたいものを選んでもらいました(複数回答)。

一番人気は「焼き鳥」で、すべての飲み方で7割前後の得票率です。2番人気の「枝豆」は、飲み方によってばらつきはあるものの得票率は6割前後、3位の「唐揚げ・フライドチキン」と4位の「刺身・カルパッチョ」は僅差で、得票率はすべての飲み方でほぼ50%を超えています(表の黄色のセルは50%を超えるもの)。

そのほか「チーズ」「乾きもの」「冷奴」「ウインナー・ハム」「焼き魚・フリッター」が多く選ばれました。

図表 好きな本格焼酎の飲み方で一緒に食べたいおつまみ

【調査概要】
調査期間:2022年3月8日~3月21日
サンプル数:865人(性別、年代、飲酒頻度は下記グラフ参照)
調査方法:懸賞応募によるWEB自記入式アンケート調査

性別、年齢別
飲酒頻度割合

※記事の情報は2022年4月28日時点のものです。


文/(株)酒文化研究所 山田聡昭
1991年創業、ハッピーなお酒のあり方を発信し続ける、独立の民間の酒専門の研究所「酒文化研究所」第一研究室室長。