コロナ禍で外飲みが制限されて1年余り。飲酒が外から内にシフトしたことで家飲みはどう変わったのでしょうか。消費者へのアンケート調査からコロナ禍前と現在の変化を読み解きます。

文/(株)酒文化研究所 山田聡昭

飲酒量は増加傾向、女性と男性30代・40代で顕著

最初にコロナ禍前と現在の飲酒量の変化を見てみましょう。

全体では「変わらない」が43%ともっとも多かったものの、「増えた」が28%で「減った」の21%を7ポイント上回り、飲酒量は増加傾向が認められます(グラフ1)。男女別に見ると、女性の方が男性よりも「増えた」という回答が多く、「減った」との差も大きくなっています。 年齢別では、30代と40代で「増えた」が30%を超えて「減った(19%)」を大きく上回りました。反対に20代は「減った」が32%と「増えた(27%)」を上回りました。この年齢層だけに見られる変化で、もともと外飲み比率が高かったために、外飲みをしにくくなってお酒から遠ざかったことが窺われます。

コロナ禍前と現在で飲用機会がもっとも増えたのは「缶チューハイ」

ではどんなお酒を飲むことが増えたのでしょうか? コロナ禍前と比べて飲用機会が増えた酒類を聞いたところ、もっとも多かったのは「缶チューハイ」で29%にのぼりました。次は「ビール(23%)」「新ジャンル・発泡酒(20%)」と続き、ここまでが20%を超えています(グラフ2)。

性別・年齢別に見ると、特定の層での増加が目立つものがあります(表1)。「飲用機会が増えた」がもっとも多かった「缶チューハイ」は、40代男性では36%と、他の年齢層よりも際立って高くなっています。40代はこのほか「新ジャンル・発泡酒」「ハイボール」「焼酎」も大きく増えており、コロナ禍でさまざまな酒類の飲用機会が増えたことが分かります。

顧客ロイヤリティが高い「新ジャンル・発泡酒」と「缶チューハイ」

次に、コロナ禍前と現在で消費者に酒類間の移動があったかを探ってみます。表2は「コロナ禍前によく飲んでいた酒類」の回答ごとに、飲用機会の増えた酒類を見たものです。日頃「よく飲んでいた酒類」がもっとも増えているのは当然ですが(青色のセル)、「コロナ禍前に新ジャンル・発泡酒をよく飲んでいた人」(以下○○ユーザーと表記)はこれが41%と非常に高く、カテゴリーへの顧客ロイヤリティが高いことが窺われます。缶チューハイユーザーもこの値が39%と高く、さらにコロナ後に平均以上に飲用機会が増えた酒類がほかにありません。缶チューハイユーザーはコロナ前と後で特に飲用酒類の変化はないようです。

ビールと新ジャンル・発泡酒ユーザーは、「ビール」「新ジャンル・発泡酒」「ハイボール」とアルコール度数が比較的低い発泡性の酒類の飲用機会の増加が顕著ですが、「缶チューハイ」の飲用機会が増えた人はわずかです。ビールと新ジャンル・発泡酒ユーザーと缶チューハイユーザーの嗜好の違いが窺われます。また、同じ発泡性の酒類でもハイボールユーザーは「ワイン」と「日本酒」以外は平均以上に飲用機会が増加しており、ビール類と蒸留酒の飲用機会を増やしていることがわかります。

発泡性のない酒類の特徴を見ると、焼酎とウイスキーのユーザーは「缶チューハイ」の飲用機会が増えたという回答が少ない点が共通し、「ビール」「新ジャンル・発泡酒」と「日本酒」の飲用機会の増加率に違いが見られます。また、日本酒ユーザーはすべての酒類で平均以上に飲用機会が増えているほか、ユーザー内でも「日本酒の飲用機会が増えた」という回答が19%に止まります。

いいちこ下町のハイボール
ロイヤルなユーザーが多い「缶チューハイ」だが、本格焼酎ベースの缶チューハイが好評なことから、彼らを焼酎に橋渡しすると期待されている

女性にストレス「おつまみ」と「後かたづけ」

ところで、家飲みにシフトしたことで、消費者はどんなことに不便や不自由を感じているのでしょうか。コロナ禍によって家飲みで困っていることを例示して選んでもらったところ、「友人や同僚と飲めない」が52%で群を抜いて多く挙げられ、20代男性では61%にのぼりました。

続く第2グループは「おつまみがいつも同じになる(33%)」と「後かたづけが面倒(31%)」です。この項目は性差が大きく、女性ではどちらも36%であるのに対して男性では前者が27%、後者は20%です。家飲みでの酒肴の準備や後かたづけが、女性にとってより負担になっていることがわかります。「買い物が多くなり面倒くさい(18%)」も同じ傾向があり、女性で困りごとに挙げる人が多くなっています。

ちなみに、家飲みでよく食べるおつまみを聞いた質問では、第1位の「チーズ」が51%と群を抜いており、居酒屋の定番メニューの「唐揚げ」「枝豆」がともに37%で2位、続いて「焼き鳥」「漬物・キムチ」「乾き物」「刺身」「ウインナー・ハム」が挙がりました。結果に性差は見られませんが年齢差があり、「刺身」「冷や奴」「サラダ・マリネ」は50代以上では30%を超えています。

家飲みを楽しむ工夫は「おつまみのバリエーションを増やす」

最後に、コロナ禍で家飲みを楽しむ工夫について見てみましょう。工夫していることの例を挙げて、当てはまるものをすべて選んでもらいました。トップは「おつまみのバリエーションを増やす」の33%、2位が「自分で料理やおつまみを作る」の29%、3位は「さまざまなお酒を準備しておく」で26%と続きました。

4位以降の項目は、家族の楽しい夕食シーンにする工夫や健康的な飲酒を心がける意識の高まりを見て取れます。

総じてコロナ禍は、ゆっくり楽しむ家飲み機会をつくりだし、家族と交流する時間が増え、健康的な飲酒を自覚するきっかけとなったのではないでしょうか。

【調査概要】
調査対象:バルミューダ・サーキュレーターが当たるインターネットでの懸賞プログラムに応募した成人
調査方法:インターネットによる自記入式アンケート
調査時期:2021年6月1日~6月13日
有効回答数:1678人(性・年齢別は別表参照。男女比は3:7)
サンプルの飲酒頻度:グラフ参照

※記事の情報は2021年7月9日時点のものです。


文/(株)酒文化研究所 山田聡昭
1991年創業、ハッピーなお酒のあり方を発信し続ける、独立の民間の酒専門の研究所「酒文化研究所」第一研究室室長。