「アンケートで探る家飲み①」では、コロナ禍により家飲みの機会が増え、酒類の中でも特に缶チューハイの伸びが目立つと報告しました。今回は、ビール類や缶チューハイ以外の酒類の中で、「飲用機会が増えた」と答えた人がもっとも多かった焼酎に注目します。焼酎は、どんな人に、どんな点が、どのように好まれているのでしょうか。
文/(株)酒文化研究所 山田聡昭
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アンケートで探る家飲み①コロナ禍が促した「ゆっくり楽しむ家飲み」
自宅でよく焼酎を飲む人は44%、50代以上では過半数
まず、誰がどんな焼酎を自宅で飲んでいるのかを確認しましょう。
普段よく飲む焼酎を聞いた質問では、「焼酎を飲んでいる」という人は全体の44%でした。年齢が上がるほど飲用者率は高まり、50代以上では5割を超えます。焼酎がこの年齢層の家飲みのお酒として定着していることが分かります。
若い世代の数字を見ると、20代では32%にとどまり、30代や40代と比べて低くなっています。
男女別では、男性(53%)が女性(40%)より高くなっています。特に男女差が大きいのは40代で、男性(61%)は女性(41%)の約1.5倍です。
飲んでいる焼酎の種類は、「本格焼酎(単式蒸留焼酎)」が27%、「甲類焼酎(連続式蒸留焼酎)」は12%でした。本格焼酎は40代以上の年齢層で支持が厚く、30%を超えています。甲類焼酎は年齢が上がるほど飲用率が高まり、60歳以上が最多です。
また、「(飲んでいる)焼酎が本格焼酎か甲類焼酎か分からない」という人は8%でした。焼酎全体の飲用者率は44%ですから、焼酎飲用者の2割弱に相当します。本格焼酎と甲類焼酎は混同されがちと言われますが、焼酎を飲む人の8割強は違いを理解していることが分かります。
そして、「飲んでいる本格焼酎の種類」は芋焼酎と麦焼酎が50%ずつで、米焼酎が17%と続き、黒糖焼酎やそば焼酎、泡盛などを含む「その他」は3%に止まりました。
7割が焼酎に対して前向き
次に焼酎の今後の飲用意向を見てみましょう。全体では「飲み続けたい」が37%でもっとも多く、飲用者率と同様に年齢が高くなるにつれて、その傾向は強くなっていきます(グラフ2)。
面白いのは、これに「機会があれば飲んでみたい」を合わせた、焼酎に対して前向きな人の割合が、どの年齢層も約7割前後ある点です。20代は「飲み続けたい」が22%ですが、「機会があれば飲んでみたい」は45%もあるのです。前項で、焼酎は20代の飲用者率が他の年齢層に比べて特に低いことを確認しましたが、それは焼酎が好まれていないからではないようです。試す機会が少ないなど、焼酎との出会いや接点に課題があるのかもしれません。
ちなみに、焼酎に前向きな人の割合は性差がほとんどなく、もっとも低い20代女性でも66%にのぼります。
焼酎の魅力は「飲み方の自由さ」「好みの味」「経済性」「健康的」
では、焼酎はどんな点が評価されているのでしょうか。グラフ3は「焼酎をよく飲んでいる人」に「焼酎を飲む理由」を聞いたものです。
第1位は「いろんな割り材で割って楽しめるから(49%)」、第2位が「好きな濃さで飲めるから(40%)」と、飲み方の自由度の高さが上位を占めました。近頃人気のレモンサワーやハイボールのほか、一般的な飲み方のお湯割りや水割り、さらに梅干しや大葉、キュウリのスライスをトッピングするなど、焼酎の飲み方はバラエティに富んでいます。また、体調やTPOに合わせて濃さを調整するのも容易です。
これに続くのは「本格焼酎の味わいが好きだから(30%)」「食事に合わせやすいから(28%)」といった香味の評価です。
そして、第5位には「経済的だから(24%)」があがりました。焼酎の価格は720mlや900mlで1000円前後のものが一般的で、日本酒やワインとさほど変わりませんが、多くはアルコール度数が25度と日本酒やワインの1.5~2倍あります。実際に飲用する際は割り材で割る方も多く、経済的と捉える方が多いのかもしれません。
以降は、「プリン体・糖質がゼロだから(22%)」「飲み慣れているから(17%)」「酔い覚めがいいから(10%)」と続きます。近頃は定期的に健康診断の受診が励行され、生活習慣病の予防に努める方が大勢います。健康意識の高まりが焼酎に追い風になっているのは確かなようです。
焼酎のはじめの一歩、おすすめは軽快ですっきり飲める麦焼酎
「焼酎を飲まない理由」も見ておきましょう。
全体の上位の3項目は「味が好きでない(21%)」「どの銘柄を飲めばよいかわからない(15%)」「今まで飲む機会がなかった(12%)」となっています。焼酎の香味が好みに合わず飲まないのは仕方がありませんが、選び方が分からなかったり、飲む機会がなかったりといった理由が上位にあがるのは、もったいないことです。
と言うのも、グラフ2で示した「(焼酎を)機会があれば飲んでみたい」と回答した方だけを対象に「焼酎を飲まない理由」の回答を見ると、「どの銘柄を飲めばいいのかわからない」が18%、「今まで飲む機会がなかった」は17%もあるのです。
初めて焼酎を飲む人へのおすすめとして、クセがなく軽快で飲みやすいタイプ、例えば麦焼酎はぴったりです。ソーダ割りやレモンサワーなど、馴染みのある飲み方とともに推奨することは、飲む側にもメーカー側にもお互いにハッピーなことと思われます。
焼酎と一緒に食べたいおつまみは…?
最後に焼酎と料理の結びつきのイメージを見てみましょう。
グラフ5は「焼酎と一緒に食べたいおつまみ」を、いろいろなおつまみを例示して聞いた結果です。回答者はアンケートに回答したすべての人で、焼酎を飲んだことのない人や酒を飲まない人も含まれています。
「焼酎と一緒に食べたいおつまみ(オレンジの棒グラフ)」は「焼き鳥(26%)」「枝豆(24%)」「刺身(23%)」「唐揚げ(23%)」「漬物・キムチ(20%)」がトップ5で20%を超えており、居酒屋の定番メニューが並びました。ただし、第1位の「焼き鳥」でも3割に届きません。焼酎を飲むときに食べたいおつまみは、幅広い料理に合わせやすいという焼酎の特徴からか、特定のものに集中していないようです。
ただし、家飲みに頻繁に登場するおつまみでありながら、焼酎とイメージが遠いものがあります。前回のレポートで見た「家飲みでよく食べるおつまみ」の回答(青の棒グラフ)と比較すると、「チーズ」「乾き物」「炒め物」「ウインナー・ハム」は、焼酎と一緒に食べたいおつまみとしての値が半分以下です。これらは焼酎とイメージが結びつかないおつまみと言ってよいでしょう。
また、切り口を変えて焼酎と食べたい料理ジャンルを聞いたのがグラフ6です。
全体としては「和食」がトップです。本格焼酎は日本酒とともに「國酒」とされる日本の伝統酒ですから和食に結び付くのは当然でしょう。他の料理ジャンルはほぼ横並びで、焼酎との結びつきが特段強いとは言えません。
ただし、焼酎ユーザーの多い40代以上の年齢層に「中華料理」をあげる人が多い点には注目しておきましょう。家庭で食卓にのぼる中華と言えば「餃子」「春巻き」などの点心、また麻婆豆腐や棒棒鶏、中華風の鶏の唐揚げなどもありそうです。焼酎が中華風おつまみに紐づくようになると、焼酎の入口になるかもしれません。
【調査概要】
調査対象:バルミューダ・サーキュレーターが当たるインターネットでの懸賞プログラムに応募した成人
調査方法:インターネットによる自記入式
アンケート調査時期:2021年6月1日~6月13日
有効回答数:1678人(性・年齢別は別表参照。男女比は3:7)
サンプルの飲酒頻度:グラフ参照
※記事の情報は2021年7月13日時点のものです。
文/(株)酒文化研究所 山田聡昭
1991年創業、ハッピーなお酒のあり方を発信し続ける、独立の民間の酒専門の研究所「酒文化研究所」第一研究室室長。