「いいちこ」づくりの大ベテラン・丸尾剛さんが、全国各地の“酒場メシ”を食す! 今回訪れたのは、北海道・釧路にある知る人ぞ知る名店『お食事処 勢㐂』さん。地元の市場で仕入れた新鮮魚介をふんだんに使った贅沢尽くしの刺し盛りを「いいちこ20度」の水割りと一緒にいただきます!
“酒場メシ”ハンター
丸尾 剛(まるお つよし)
三和酒類株式会社 SCM本部所属
39年の焼酎づくりのキャリアを生かし、社内の若いつくり手たちのスキルアップをサポートする「焼酎づくりの先生」。普段家で飲むのは、もっぱら「いいちこ20度」か「いいちこ日田全麹」。最近、麹を使った調味料づくりにハマッている。
予約必須! 釧路で旨い魚を食べるなら『お食事処 勢㐂』
北海道釧路市を訪れたのは、5月半ばを過ぎた頃。「霧の街」として知られる釧路は、この日も中心街まで海霧が立ち込めていました。
釧路の沖合は、南から北へと向かう暖かな黒潮と、北から南へと向かう冷たい親潮がぶつかる場所。この寒暖流が濃霧を発生させ、日本有数の水揚げ量を誇る豊かな水産資源を育みます。
今回の目的地『お食事処 勢㐂(せき)』さんは、そんな釧路や道内の海の幸が堪能できる、知る人ぞ知る名店。どんな美味が待っているのか、さっそく期待を胸に暖簾をくぐります!
丸尾「こんにちは、今日はお世話になります!」
関川「丸尾さん、いらっしゃい! 遠いところようこそ」
笑顔で迎えてくれたのは、店主の関川 保一(せきかわ やすかず)さん。釧路で生まれ育ち、札幌などで料理修行をした後、1998年に地元でこの店をオープン。今年25周年目を迎えます。
来店客の6~7割が地元のお客さんですが、出張で来たビジネスパーソンや旅行者など道外から訪ねて来る人もいるそう。
関川「なかにはウチで食事をするためだけに、泊りがけで来てくれる人もいてね。ありがたいことです。でもやっぱり地元のお客さんも大事にしたいし。だから店の宣伝はしないの。たくさん来られても一人じゃ対応できないから。目立たず、静かにやるのが一番」
けれど、そんな関川さんの思惑とは裏腹に、評判が評判を呼んで店は連日大繁盛。お客さんのお目当てはもちろん、店主が目利きした地元の魚介類や道内の旬野菜を豪快に使った、ここでしか出会えない料理の数々です。
“北海道”を凝縮した「特撰 お刺身盛合せ」×かぼすで爽やか「いいちこ20度の水割り」
そんな『お食事処 勢㐂』で「これを食べずして釧路を去るべからず」とご常連の間でも語り継がれる一品がこちら、「特撰 お刺身盛合せ」です。
丸尾「これ本当に1人前ですか?」
関川「最初はみんな驚くんだけど、結局それくらいペロッと食べちゃうよ(笑)」
魚はすべて店主が“釧路の台所”として知られる「和商市場(わしょういちば)」に出向いて直接買い付けてきたもの。信頼している鮮魚店を毎朝4~5軒まわり、その中から自分が納得できる魚だけを選んでいるそう。
関川「今日はクジラの尾の身とボタンエビ、活〆のおひょう(カレイ)、ホッキ貝、本マグロ、ウニ…。それからマスノスケ(キングサーモン)。全部釧路や道南で獲れた、今一番おいしいものばかりです」
丸尾「どのネタもめちゃくちゃ光り輝いてますね」
喉を鳴らしながら、「いいちこ20度」の水割りを氷少なめでリクエスト。
関川「釧路の人たちもだいたい焼酎は20度を飲むよ。今日はちょうど『いいちこ』さんの地元の大分から届いたかぼすがあるから、搾って飲みな」
早速、厚みのあるマスノスケの刺身から。
丸尾「うわ、なんと良質な脂。とろけるようです。九州の魚の脂はさっぱりしたものが多いですけど、北海道の魚は脂が濃厚ですね。キリッとした濃口醤油に合います」
そこにかぼすを搾った「いいちこ20度」の水割りを重ねて。
丸尾「氷を少なめにしてもらって正解でした。冷たさの刺激が前に来ず、口当たりがまろやか。脂ののった刺身に合います。かぼすを入れることでさっぱりしますね」
その後も、クジラの大トロとも呼ばれるサシ入りの尾の身に、肉厚で甘みののったホッキ貝、ウニ、ボタンエビ…と箸もグラスも止まらない丸尾さん。関川さんの予言通り、いつの間にかペロリと平らげてしまいました。
丸尾「もうワサビすらいらない。それくらい魚自体がおいしいです。はるばる釧路まで来た甲斐がありました」
熟練の技が光る! 『勢㐂』自慢の焼きものと煮つけ
すっかり満足気な丸尾さんに、「せっかくこの時期に来たんだから、これも食べなきゃ」と関川さんがおすすめしてくれたのが、高級魚として知られる「時鮭(ときしらず)」の塩焼きです。
厚い切り身におろし醤油をつけていただきます。
丸尾「こんな濃厚な味の鮭、初めて。脂もめちゃくちゃのっててジューシーです」
ここに合わせるのは「いいちこ20度」に氷と炭酸を少しだけ入れたもの。
丸尾「バッチリですね。炭酸を少なめにすることで時鮭の旨みを洗い流さずに、余韻に寄り添うんですよ。この鮭のおいしさは洗い流したらもったいない、もったいない」
関川「うまいでしょ? 最高に脂がのった状態ですから。活〆だと鮮度バリバリなんで、身が硬直して脂がまわらないんですよ。だから、あえて氷掛けして2~3日寝かせて。そうすると全体に脂がまわるんです」
関川さんの職人技が光るもう一品が「めんめ(キンキ)の煮つけ」です。
関川「コツはね、濃い目の煮汁でしっかり煮ること。 めんめのような脂ののった魚はきちっと煮ないと、中まで味がしみ込まないで、ただたれを付けて食べてるみたいになっちゃうから」
しっかり煮つけているのに、身の部分はごらんの通りふっくら。
丸尾「見た目は豪快ですけど、食べると繊細。皮に付いた脂の部分が甘くて滑らかで。煮汁もよくしみていて、噛むほどに複雑な味わいが出てきます」
そうして今度は「いいちこ20度」の水割りをひとくち。
丸尾「ちょっと氷が溶けて口当たりがまるくなったところに、キンキの滑らかな味がすごく合う。もともと『いいちこ20度』って白身魚の旨味を引き出すようにつくられているんですけど、やっぱり間違いなかったです」
「おいしいものを出すためには、自分の目で見なきゃ」
15人くらいしか入らない小さな店に、地元から、遠方から、連日引きも切らずにお客さんが訪れる『お食事処 勢㐂』。ですが、関川さんはそんな忙しさの合間を縫っては旅行に出かけ、全国の名店を食べ歩いたりすることも欠かさないそう。
関川「例えば九州に行けば、北海道の魚ともまた全然違うしね。その土地の魚の扱い方、さばき方を見るだけで勉強になる。毎日の仕入れもそうだけど、おいしいものを出すためには、やっぱり自分の目で全部見なきゃ。いくら信頼している魚屋さんだって、失敗するときは失敗するんだから。自分で注文つけて、実際に見て、魚触って、その中から『これならいいな』って選んで。それで失敗したら俺の責任。自分の目が間違ったということ」
自分の目利きに対する自信と覚悟。それを磨き上げる原動力となっているのは、一期一会になるかもしれないお客さんを大事にしたいという思いです。だから今日も関川さんは、一人市場に向かい、店で仕込みをし、カウンターに座る客人に「今一番おいしいよ」と言って料理をすすめます。
そんな『お食事処 勢㐂』さんを訪れて、丸尾さんいかがでしたか?
丸尾「関川さんは根っからの職人ですね。魚の全てを知り尽くしているというか。新鮮なものをただ用意するんじゃなくて、刺身にしても煮つけにしてもお客さんに届くまでを逆算してやっているところがすごいなと。それは焼酎づくりにも通ずるところがあります。
そして、当然のことながら釧路には釧路の食文化、酒文化があって、そこに大分でつくられる『いいちこ』があることがなんだか不思議で、しみじみ嬉しかったです。関川さんが目利きした北海道の幸とそれに寄り添う『いいちこ』、ぜひ釧路に来たら試していただきたいです」
鍋にカツオ出汁(8~9)、酒(1)、濃口醤油(1)、みりん(1)、砂糖(好みの量)を全部合わせて入れ、そこにスライスした生姜とめんめ(キンキ)を入れて煮ます。途中で味見しながらしっかり煮つけるのがおいしく仕上げるコツだよ!
今回お世話になったお店はこちら!
「お食事処 勢㐂」
北海道釧路市末広町3丁目久田ビル1F
TEL:0154-25-7555
営業時間:17:30~23:00
定休日:日曜
※記事の情報は2023年6月27日時点のものです。