「いいちこ」づくりの大ベテラン・丸尾剛さんが、全国各地の“酒場メシ”を食す! 今回訪れたのは、九州屈指のお茶どころ・温泉どころとして知られる佐賀県嬉野市にある『お食事処 志津』さん。名物のとろける温泉湯豆腐を「いいちこの嬉野茶割り」と一緒にいただきます!
“酒場メシ”ハンター
丸尾 剛(まるお つよし)
三和酒類株式会社 SCM本部所属
39年の焼酎づくりのキャリアを生かし、社内の若いつくり手たちのスキルアップをサポートする「焼酎づくりの先生」。普段家で飲むのは、もっぱら「いいちこ20度」か「いいちこ日田全麹」。最近、麹を使った調味料づくりにハマッている。
お茶と温泉の街・嬉野で54年! 湯あみの後に訪れたい『お食事処 志津』
丸尾さんが嬉野(うれしの)を訪れた4月中旬、お茶の産地として有名なこの街はちょうどお茶摘みシーズン真っ只中。街を取り囲む山々の裾野に広がる茶畑では、春の穏やかな陽光を浴びながら柔らかな新芽が摘み取られるのを待っていました。
丸尾「絶景とはこのことですね。どこもかしこも見渡す限りの茶畑で。この時期に嬉野に来られて本当にラッキーでした」
新緑の茶畑で心洗われ、爽快気分の丸尾さん。嬉野の街へ下りて、今回の目的地『お食事処 志津』さんへ。
辻󠄀本「丸尾さん、いらっしゃい! お待ちしていました」
出迎えてくれたのは、店主の辻󠄀本数記(つじもとかずき)さん。父親が昭和44年(1969年)に始めた店を受け継ぎ、辻󠄀本さんは2代目として妻と息子夫婦と4人でこの食事処を切り盛りしています。
丸尾「こんにちは。三和酒類の丸尾です。今日はお世話になります!」
嬉野は九州屈指の温泉地としても知られる街。この土地の湯は独特のとろみがあり、浸かれば肌がすべすべになることから“日本三大美肌の湯”と呼ばれ親しまれています。その湯を目当てに、最近では国内はもとより韓国や台湾、中国など海外からも大勢の観光客が訪れているそう。
辻󠄀本「うちの店にも湯上りに浴衣を着て来られる方がいますよ」
丸尾「湯あみ後に浴衣で一杯、いいなぁ。旅先ならではの楽しみ方ですね」
生姜醤油で食べるとろとろ「温泉湯豆腐」×爽やか「いいちこの嬉野茶割り」
嬉野温泉は、浸かる楽しみだけでなく、食べる楽しみももたらしてくれます。それがこの街の名物「温泉湯豆腐」です。嬉野の温泉水に地元で作られた豆腐を入れてくつくつ煮込むと、あら不思議。みるみる豆腐の角が取れて、煮汁まで白濁するほどとろとろに。この魔法は、弱アルカリ性の温泉水の成分が大豆のタンパク質を溶かすことで起こるのだそう。
辻󠄀本「嬉野の温泉は特別なんですよ。似た泉質をもつ温泉地は他所にもたくさんありますけど、同じように煮ても豆腐がこんな風にとろーんとならんみたいです」
嬉野では、この温泉水の働きを邪魔しないために鍋に昆布も入れません。出汁はたれに。街では食堂や旅館など至る所で温泉湯豆腐が食べられますが、ごまだれのところもあればポン酢だれものところもあって、たれがその店の味となっているんだとか。『志津』さんのたれは生姜醤油ベース。飽きずにいくらでも食べられるように、さっぱりした味つけにしているのが自慢です。
そんな温泉湯豆腐とぜひ一緒に味わいたいのが「いいちこの嬉野茶割り」。麦焼酎「いいちこ」を水出しした嬉野茶(うれしの茶)で割ったものです。
丸尾さん、早速楽しみにしていた温泉湯豆腐をいただきます!
丸尾「もうね、口に入れると豆腐がすぐにとろけます。大豆の香りも味も濃い。温泉水のおかげかほんのり塩気もあって、これはエンドレスに食べ続けられるヤツですね」
そして澄んだ萌黄色の「いいちこの嬉野茶割り」をひと口、ふた口。
丸尾「うわー、びっくりするくらい爽やかです。お茶の香りは豊かなのに渋みが全くない。もともと『いいちこ』って、この湯豆腐のようなクリーミーな料理に合うようにつくられているんですけど、嬉野茶が加わることでよりさっぱりしますね。ご主人特製の生姜醤油だれにもめちゃ合います」
そう言ってグラスを傾ける丸尾さんの脳裏には、先ほど眺めた嬉野の茶畑がよみがえります。
辻󠄀本「嬉野茶は、摘み取りの時季がちょっと早いんですよ。他の地域では若葉を少し熟成させてから摘みますけど、嬉野では柔らかいうちにぱっと摘む。だから、あっさりすっきりしていて、『いいちこ』と合わせても全然ケンカせんでしょ? お茶の香りがしつつ、焼酎の味もしてね。私が一番おいしいと思う割合は嬉野茶が7で焼酎が3」
丸尾「まさに黄金比率です。ご主人が嬉野茶のおいしさを熟知されているから、このベストな割合を導き出せるんでしょうね」
これも外せない! 嬉野茶割りがすすむ『志津』自慢の味
念願の温泉湯豆腐をすっかり平らげてしまった丸尾さん。そこに辻󠄀本さんが「これも嬉野茶割りに合いますよ」とすすめてくれたのが、「カサゴの刺身」と「煮物の盛り合わせ」です。
カサゴは店内にある大きな生け簀から引き揚げて、すぐに捌かれます。
丸尾「めちゃくちゃ身が締まっていますね。細胞がまだ生きてるんじゃないかと思うくらいピチピチです」
辻󠄀本「私の地元の長崎県西海市で獲れたものなんですよ。うず潮で有名な場所でね、そんな潮で揉まれるから身が締まっているんです」
丸尾「身の味も濃いですねー。醤油をつけなくてもいいくらい」
そして『志津』さん自慢のもう一品がこちら、「煮物の盛り合わせ」。
辻󠄀本「開店当時からずっとあるメニューで、味付けも50年以上変わっていません。じわじわ味をしみこませるために、低温でゆっくり煮るのがコツなんです。今の時期だったらタケノコとかフキとかゼンマイとか、その季節に採れる山菜で。嬉野茶割りとの相性も抜群ですよ」
丸尾「タケノコ、柔らかい。全体的に優しい味付けなんですけど、食材ごとに微妙に味わいが違います。それぞれの具材に合うように出汁をとって煮ているんでしょうね」
そして、本日何杯目かの嬉野茶割りを。
丸尾「嬉野茶自体に上品なあまみがあって、そこがまた『いいちこ』の優しい味わいにマッチするんです。しかも後味がさっぱりしているから飲み飽きしない。これ、永遠に愛される飲み物だと思います」
嬉野茶×いいちこで、街を、佐賀を、もっと盛り上げたい
実はこの「いいちこの嬉野茶割り」、街中の居酒屋や食堂、スナックなど嬉野のあらゆる料飲店でも楽しむことができるそう。焼酎を注文すると「水割り? お茶割り?」と聞かれるほど定番の飲み方として浸透しているんだとか。
この人気の火付け役こそ、嬉野温泉料飲店組合長としての顔ももつ辻󠄀本さんなのです。
辻󠄀本「理由は、ただただ自分が飲んでおいしいと思ったから。『いいちこ』は昔から好きで水割りでよく飲んでいたんですけど、嬉野茶割りで飲むようになってからはこればっかりです。で、これだったら嬉野名物として街ぐるみで盛り上げていけるなと」
これはいけると確信した辻󠄀本さんは、街中の料飲店に水出し茶専用ボトルを配布。「いいちこ」を水出し茶で割るだけで作れる嬉野茶割りは飲みやすく、どんな料理にも合うとお客さんの間でもすぐに評判となりました。
さらに辻󠄀本さんは、こんな思いも打ち明けてくれました。
辻󠄀本「嬉野は昨年の秋に新幹線も開通して、観光地として全国的に認知度が上がっています。ただ、佐賀県として見てみると全国での知名度はまだまだ。私としては、嬉野の街からもっと佐賀の魅力を発信していきたいと思うとるんです」
かつては「嬉野宿」と呼ばれ、小倉から長崎をつなぐ長崎街道の宿場町として多くの旅人を迎え入れてきた嬉野。この土地のお茶と温泉、そして料理は、今も昔も、もてなしの心を伝えるのに欠かせないものなのです。
そんな嬉野の魅力を味わい尽くした丸尾さん、いかがでしたか?
丸尾「いろんな妙技に触れさせてもらえた一日でしたね。お茶を栽培する方の技、料理の仕込みをし、嬉野茶割りを作る辻󠄀本さんの技…。『いいちこ』もさまざまな職人たちの手を経てできるお酒です。この嬉野茶割り一杯に、そうしたプロの技が何層にも重なっているんですよね。このおいしさ、ぜひたくさんの方に嬉野で体験していただきたいです」
湯でお茶を入れるときよりも茶葉を多めに使い、低温の水で濃い目に抽出しましょう。抽出は静かにゆっくり時間をかけて。混ぜたりぎゅっと押したりすると、お茶の渋みや苦みが出てしまいます。グラスに氷を入れ、「いいちこ」と水出しした嬉野茶を3:7の割合で注ぎ、よく混ぜてからどうぞ!
今回お世話になったお店はこちら!
「お食事処 志津」
佐賀県嬉野市嬉野町大字岩屋川内甲124-1
TEL:0954-42-1924
営業時間:11:30~22:00
定休日:第2・第4月曜
※記事の情報は2023年5月26日時点のものです。