「いいちこ」づくりの大ベテラン・丸尾剛さんが、全国各地の“酒場メシ”を食す! 今回向かったのは、東京にいながら本場の秋田料理が味わえる『太平山酒蔵 総本店』さん。比内地鶏の出汁がしみた絶品きりたんぽ鍋を「しんみちハイボール」とともにいただきます。
“酒場メシ”ハンター
丸尾 剛(まるお つよし)
三和酒類株式会社 SCM本部所属
38年の焼酎づくりのキャリアを生かし、社内の若いつくり手たちのスキルアップをサポートする「焼酎づくりの先生」。普段家で飲むのは、もっぱら「いいちこ20度」か「いいちこ日田全麹」。最近、麹を使った調味料づくりにハマッている。
東京の路地裏にある、秋田料理が自慢の名酒場
“酒場メシ”ハンター・丸尾さんが今回訪れたのは、東京・四ツ谷駅からほど近い「しんみち通り」から少し脇に入った場所にある隠れ家的な店『太平山酒蔵(たいへいざんさかぐら) 総本店』さん。この地で50年近く暖簾を掲げる名酒場です。店の中央に囲炉裏のテーブルがでんと構え、気分を盛り上げてくれます。
髙橋「よっ、大分県人! いらっしゃい!」
丸尾「今日はよろしくお願いします!」
聞けば店主の髙橋幸夫(たかはしゆきお)さんの生まれも、丸尾さんや「いいちこ」と同じ大分県。20歳の時に上京し、以来、父親である先代とともに店を商ってきました。
店名にもなっている「太平山」は、秋田県を代表する銘酒です。この店の自慢は、そんな「太平山」とともに本場仕込みの秋田料理が味わえること。それゆえ故郷の味を懐かしんで来店する東北出身のお客さんも多いそうです。
丸尾「でも、なぜ大分出身の髙橋さんが秋田料理のお店を?」
髙橋「もともとは父親の代から、昔ながらの大衆居酒屋という感じだったんですよ。でも、時代とともに大きなチェーン店なんかが出てきて、ウチもなにか特色を出したいと。そんな時に『太平山』の蔵元さんに秋田のいろんな地方を車で案内してもらいましてね。秋田って縦に長い県でしょ? だから上と下では、育つ植物も獲れる食材も全然違うんですよね。そこに魅かれて、よし、秋田料理でやっていこうと」
丸尾「なるほど、それで秋田料理を」
髙橋「でも初めのうちは手探りですよね。全然知識ないですから」
丸尾「今や名酒場ですけど、50年の間にいろんな時代の変遷があったんですね」
雪国・秋田の厳しい自然が育む美味を初体験!
丸尾さんにとっては、今回が人生初の秋田料理。メニューのひとつひとつが新鮮です。
髙橋「まずは『いぶりがっこ』、食べたほうがいいんじゃない? バリバリいってください」
丸尾「漬物なのに燻製感があるんですね。食べた後にも香ばしい余韻が残ります。いやー、おいしいなぁ」
髙橋「大根を燻してから漬けるんですよ。昔の家では囲炉裏の天井に大根を吊るしてね、火を焚くと自然に燻されて、それを漬けていたみたいです。あと寒さも全然違うんですよね、東北と大分とでは。秋田には『なた割り漬け』ちゅうものもあるけど、湿度と寒さがないと、こういう漬物はできないんですよ」
こうした漬物をはじめ、ほとんどの料理に秋田から届く産直食材を使うのが太平山酒蔵のこだわり。どの食材も店主の髙橋さんが現地に足しげく通って惚れ込んだもので、この“本物”が店の味を支えています。
髙橋「せりに鶏、ジュンサイ。稲庭うどんもあるし、キノコもある。あと、秋田では五月の連休くらいから春が始まって、タラの芽やらネマガリタケやら山菜が出てくる。でも旬が短いから、店で出せるのもほんの限られた期間だけです」
丸尾「秋田の春は短いんですね」
髙橋「海の食材も天気次第なんですよね。特にこの鰰(はたはた)なんかは、天気が悪いと漁に出られないから。期待して来られたお客さまにも『ないんですよ』なんてことになってしまったり。でも、無理して代わりのものを出すと評判を落としちゃうから」
その秋田直送の鰰を塩焼きにしたものがこちら。メスは「ブリコ」と呼ばれる卵を抱えています。
もちろん、鰰も初体験の丸尾さん。となれば日本酒を…と心が揺らいだ様子でしたが、「いいちこ25度」に大分県産かぼすを搾った「かぼちこサワー」をメニューの中に発見。それを一緒にいただくことにしました。
丸尾「じゃあ、早速ブリコから…。むふふ…。卵一粒一粒の弾力、ぷちぷち感が半端ないです。それにねっとりしているんですね~。魚本来の旨味や脂も感じます」
そして、すかさず「かぼちこサワー」を。
丸尾「うーん、うまいっ。間違いない組み合わせです。魚にレモンを搾るように、鰰にかぼすの爽やかな酸味がよく合います」
髙橋「卵がそういう風に糸を引いてトロッとしているのは、今の時期だけですね」
丸尾「ちょうどいいタイミングに来ました」
絶対外せない! 秋田の食材の滋味が溶け込んだ「きりたんぽ鍋」
そして、太平山酒蔵に来たら絶対に外せないのが「きりたんぽ鍋」です。比内地鶏で出汁を取り、そこに三関(みつせき)のせりや旬のキノコといった産直野菜、店手作りの「きりたんぽ」を入れていただきます。
髙橋「比内地鶏は、丸鶏の状態で送ってもらうんですよ。それを店でさばいて、ガラでまずスープをとって。鶏の肉も入れますから、二重に出汁が出ます」
丸尾「『きりたんぽ』っていうのは、もち米で作るんですか?」
髙橋「うるち米です。地元では、昔は新米の時期だけ作っていたみたいですけど、ウチは職人たちが年中作っています。作り立てはやっぱり味が全然違うので。コシも違いますから、煮ても崩れないんですよ」
髙橋「あと欠かせんのが、三関のせり。この根っこを入れるのが大事なんです」
丸尾「わ、根っこってそんなに長いんですね。どんな味がするんやろ?」
出汁を吸ったアツアツきりたんぽに、旨さ弾ける「しんみちハイボール」
さて、きりたんぽ鍋がいい具合に煮えてきました。丸尾さんも準備万端。グラスに注がれているのは、料飲店向け商品「いいちこ深薫」を炭酸で割った「しんみちハイボール」です。
丸尾「では、いただきます! まずは一番気になっていた三関せりから」
丸尾「うわぁ、歯ざわりがシャキシャキですね。そしてせりの香りが強くて濃い。爽やかな香りが鼻からすーっと抜けます」
続いて、きりたんぽに箸を伸ばして…。
丸尾「おほ! きりたんぽ、鶏のうまい出汁をめちゃくちゃ吸っています。ムチッとした歯ごたえがあって、噛めば噛むほど味が出てきますね。焼き目の香ばしさもいい」
さらに、きりたんぽ鍋に欠かせない比内地鶏も。
丸尾「おぉー、弾力がすごいですね。大分でも結構鶏を食べますが、比内地鶏もうまいなぁ。旨味が濃いです」
そして「しんみちハイボール」をひと口、ふた口。
丸尾「んー、合いますねー。きりたんぽ鍋もしんみちハイボールも、香りが優しくて味わいが濃いんですよね。いい感じでマッチします」
ここで丸尾さん、キリリと“焼酎づくりの先生”の顔になって「いいちこ深薫」の話をはじめました。
丸尾「焼酎の蒸留方法には<常圧蒸留>と<減圧蒸留>の大きく2つがあって、常圧蒸留では『味原酒』、減圧蒸留では『香り原酒』をつくるんです」
丸尾「で、『いいちこ25度』なんかはその2種類の原酒をブレンドしているんですけど、この『いいちこ深薫』は味原酒をメインで使っている商品なので、味が濃く出る。そして最後の仕上げのところで、少し爽やかな香りが出るような工夫もしていて。『深薫』は料飲店さん向けの『いいちこ』なので、飲み方次第でいろいろな料理に合わせられるような造りをしているんです。こういう風に炭酸割りにしてもいいし、ロックもまたいい。特にさっきいただいたいぶりがっこには、ロックがぴったり合うと思います」
髙橋「どんな料理にも合わせられるっていうのはいいよね」
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この店の料理と人に寄り添う酒として
初めての秋田の味を「いいちこ」とともに堪能した丸尾さん。実はその「いいちこ」にとって、『太平山酒蔵 総本店』さんはちょっと特別な存在です。1979年2月に誕生した「いいちこ」を、そのわずか2~3か月後に全国の料飲店で最初に取り扱ってくれたのが、この店なのです。
髙橋「先代の時代にいろんな縁があって、『いいちこ』を扱うことになったみたいですね」
丸尾「じゃあ、本当にこのお店から『いいちこ』は始まったんですね」
髙橋「ウチは東京にある秋田料理屋ってことで、東北に限らずいろんな地方出身のお客さんがいらっしゃるんですよね。だから、やっぱりお酒の好みもいろいろで。日本酒党の方もいれば、焼酎党の方もいますからね。今置いてるのは『いいちこ25度』と『いいちこ深薫』、『特撰 いいちこ日田全麹』。あと『いいちこスペシャル』も決まってロックで飲むお客さんがいるから置いています」
丸尾「嬉しいなぁ」
そんな“いいちこの原点”ともいえる場所で秋田料理を味わってみて、丸尾さんは何を思いましたか?
丸尾「野菜にしても、魚にしても、鶏にしても、やっぱり大分のものとは随分味わいが違いましたね。秋田の寒い時季を経て、雪の下から出てきた食材なんかを使っているので、ものすごくこう…味に芯があるというか、そんな気がしました。
で、私が言うのもなんですが、こういう料理には当然日本酒が合うと思います。ただ、『いいちこ』でも飲む温度帯を変えたり、飲み方を変えたりすると、秋田料理の邪魔をせずに寄り添えるんですよね。それを確認できて、内心ほっとしています(笑)」
丸尾「今回は冬の時期にお邪魔しましたけれども、ご主人の話を聞くと、春も夏もまた違った味覚が楽しめるようなので、ぜひ四季を通じて訪れてみたいですね」
今回お世話になったお店はこちら!
「太平山酒蔵 総本店」
東京都新宿区四谷1-20 小泉ビル1F
TEL:03-3355-1649
営業時間:17:00~23:00
定休日:日曜・祝日
※記事の情報は2022年12月23日時点のものです。