一年の始まりを祝い、酌み交わされてきた「お屠蘇」。名前は知っていても、意味や飲み方などはよく知らない、という方もいるのではないでしょうか。この記事では、そんな素朴な疑問をわかりやすく解説し、後半では本格麦焼酎「いいちこ」で楽しめるアレンジもご紹介します。お気軽にお試しください。

お屠蘇とは?

お屠蘇は、元日の朝に無病息災や長寿を願って飲まれてきた薬酒です。日本酒や本みりんに、数種類の生薬を合わせた「屠蘇散(とそさん)」を浸して作られます。

飲むと一年の邪気を払えるとされ、古きよき新年の風習として現代まで受け継がれています。

お屠蘇の意味

「屠」には「ほふる(うち滅ぼす)」「邪気を払う」、「蘇」には「魂がよみがえる」という意味があります。

「屠蘇」には、“病魔を退け、一年の始まりを清々しく迎えたい”という願いが込められていると考えられます。

お屠蘇の歴史

お屠蘇の起源は、中国・唐の時代にあるとされています。

孫思邈(そんしばく)という仙人が、大晦日の黄昏時になるといくつかの薬草を袋に入れて井戸に吊し、元日の朝、それに酒を注いで飲んでいました。彼がいつまでも若々しく健康的だったことから、人々は「あの酒が秘訣ではないか」と考え、彼にあやかって正月に薬酒を飲む習慣が生まれたそうです。

日本へは、約1200年前の9世紀初頭に伝わりました。嵯峨天皇のころ、宮中の四方拝で屠蘇散が用いられ、正月の飲み物として定着したと言われています。

その後、江戸時代後期になり、医者が薬代の返礼として屠蘇散を配ったことがきっかけで世間一般にも広まり、お屠蘇の風習は庶民の正月行事として根付いていきました。

※ 毎年1月1日、元日の早朝に宮中で行われる儀式。天皇が東西南北の神々(天地四方の神祇)を拝み、国家の安泰や五穀豊穣を祈る。

お屠蘇の中身

お屠蘇に使われる屠蘇散には、体を温めたり、胃腸の働きを助けたりする生薬がブレンドされています。

含まれるものは一定ではありませんが、代表的な生薬と、それぞれの主な作用は以下の通りです。

生薬名

読み/別名

主な作用

山椒

さんしょう

整腸・健胃作用

山査子

さんざし

整腸・健胃作用

肉桂

にっけい/シナモン

整腸・健胃作用

丁子

ちょうじ/クローブ

整腸・健胃作用

白朮

びゃくじゅつ

利尿作用

防風

ぼうふう

解熱作用

赤小豆

あかあずき

解熱作用

桔梗

ききょう

鎮痛・抗炎症作用

陳皮

ちんぴ

風邪症状の緩和

大棗

たいそう/ナツメ

滋養強壮・緊張緩和

お屠蘇の作り方

お屠蘇は、薬局やスーパーで売られているティーバッグ状の屠蘇散を使えば、手軽に作ることができます。

① 屠蘇散を用意する
  市販の屠蘇散を1包準備します。

② お酒に浸ける
  大晦日の夜、日本酒または本みりんに屠蘇散を浸け、一晩おきます。

③ 完成  
  翌朝、屠蘇散を取り出したらできあがりです。

お屠蘇の飲み方

元日の朝、食事の前にいただくのが基本とされています。正式には、屠蘇器と呼ばれるお銚子と三段重ねの盃を使いますが、なければ家にある酒器でも構いません。

屠蘇器の一例。右側の銚子にお屠蘇を入れ、左側の盃注いで飲む
屠蘇器の一例

家族そろって年少者から順に飲むのが習わしとされ、大・中・小それぞれの盃に注いでいただく、もしくは一つの盃に三度に分けて注いでいただく(一、二度目は注ぐ形だけの場合も)といった作法もありますが、地域や各家庭によっても飲み方はさまざまです。正解があるわけではないので、一つの目安として知っておくとよいでしょう。

お屠蘇とお神酒の違い

お屠蘇と混同されがちなのがお神酒(みき)です。

お神酒は、神さまに捧げるためのお酒で、神前に供える「御神饌(ごしんせん)」の一つとされています。

一方、お屠蘇は、人が新年を迎える際に飲む薬酒。無病息災や長寿を願う風習として親しまれています。

屠蘇散は「いいちこ」で割ってもおいしい

屠蘇散は、本格麦焼酎「いいちこ」と合わせてもおいしくいただけます。

作り方はお屠蘇と同様。消毒した保存瓶に「いいちこ25度」を注ぎ、屠蘇散を一晩漬けるだけです。

「いいちこ25度」のフルーティな風味に、生薬の香りがやさしく重なり合い、炭酸水で割るとすっきりとした味わいに。年始に限らず、いつでも気軽に取り入れられるので、ぜひ試してみてくださいね。

【「いいちこ25度」とは】

いいちこ25度

1979年の発売以来、長らく愛され続ける本格麦焼酎のベストセラー。自然豊かな澄みきった空気のなか、丁寧に選び抜かれた大麦と大麦麹、地下深くから汲みあげる清冽な水だけで醸されています。原料由来の香りやうまみをしっかり感じられつつ、軽快な飲み口が楽しめるのが特徴。フルーティで華やかな香りと、クセがなくすっきりした味わいで、どんなジャンルの料理とも相性よく楽しめます。

〈参考文献・サイト〉
・中江克己/著『お江戸の意外な「食」事情』PHP研究所
・鈴木昶/著『身近な「くすり」歳時記』東京書籍株式会社
・岩下宣子/監修『あなたの人生を変える日本のお作法』自由国民社
・大浦春堂/著『神様が宿る御神酒』神宮館 
政府広報オンライン『健康や長寿を願って飲む薬草酒「お屠蘇」』

※記事の情報は2025年12月15日時点のものです。