「いいちこ」がつくられている大分県は、実はおいしいものの宝庫なんです。そんな大分グルメの魅力を一番よく知る方々にインタビュー。 “しいたけ王国”として、質・量ともに日本一を誇る大分県の乾しいたけ。約380年の歴史があり、毎年開催されている「全国乾椎茸品評会」でも団体優勝の常連です。そんな県民の誇りでもある、大分県産乾しいたけのおいしさに迫ります。
お話をしてくれたのはこの方
大分県産「乾しいたけ」は一味違う!
-茂里商店さんで販売されている乾しいたけの特徴を教えてください。
茂里 しいたけには、菌床栽培と原木栽培の2種類があります。一つめは、おがくずなどを固めた菌床と呼ばれるブロックに、しいたけのもととなる菌を植え付け、ハウスで人工的に栽培した菌床栽培。二つめは、乾燥させたクヌギなどの原木に菌を植え付け、林など自然に近い環境で栽培した原木栽培です。
茂里商店で扱っているしいたけはすべて原木栽培です。独自で育てているしいたけもありますが、大分県豊後大野市を中心にした約1200軒のしいたけ農家と連携して、良質なしいたけから乾しいたけをつくっています。また、使用している原木栽培のしいたけは、原木に菌糸を植え付けてから収穫までに2年かかります。乾しいたけができるまでとても手間がかかっていますが、その分、自然に近い状態で栽培するため、しっかりとした歯ごたえと味に深みのあるしいたけができるんです。かつては天日干しで乾燥させていましたが、最近では、乾燥機でしっかり乾燥させて品質管理をしているので、大分県では、あえて“乾しいたけ”と言っています。
-乾しいたけは、生のしいたけとどのような違いがあるんですか?
茂里 乾しいたけは、生しいたけを乾燥させたものですが、保存性が高まるだけでなく、旨味成分が増します。旨味が凝縮されているから、塩分を効かせなくてもおいしいんです。また、ビタミンDや食物繊維、カリウムなどの栄養成分も生しいたけよりアップしているほか、血圧やコレステロールを下げたり、老化などが予防できる抗酸化作用があったりと乾しいたけのおすすめポイントは多いんですよ。
-大分県はなぜ乾しいたけの生産が盛んなのでしょうか?
茂里 大分県が乾しいたけを日本で一番多く生産している理由は、大分県の気候が、しいたけ栽培に一番適しているからだと思います。特に豊後大野市は、阿蘇山の噴火で出来た豊潤な台地があるので、原木栽培のもととなるクヌギが多いんです。また、高温多湿な気候もしいたけを栽培するための条件として適しています。そのため乾しいたけに適したしいたけも多く生産できるのだと思います。
県内の生産者も、よりおいしいしいたけを作ろうと努力し、また種菌メーカーさんも品種改良に積極的に取り組んでいるのも大きいのではないでしょうか。豊後大野市周辺で採れるしいたけは、“冬菇(どんこ)”と呼ばれる肉厚のものが多く、さらに香り高いのも特徴です。
乾しいたけの老舗ながらも、時代に合った味を追い求める
-茂里商店さんは1950年創業とのことですが、商品づくりで一番大切にしていることは?
茂里 やはり、昔から付き合いのある農家さんはもちろん、最近始められた生産者の方々とも関係を築いていくことが何よりも重要だと思っています。信頼できる生産者がいるから、上質なしいたけを安定的に仕入ることができるんです。創業当時、私の父である先代も、自転車でしいたけ農家を巡り、一軒一軒しっかり向き合って買い付けを行っていました。そういった姿勢を私も大切に受け継いでいます。
また、農家さんがより質の良いしいたけを多く生産できるようにアドバイスもしています。質の良いしいたけの生産量が増えれば、農家自体の収入にもつながります。そして、私たちの商品の品質もアップしますし、それはお客様にも喜んでもらえることにもつながります。お互いの利益になるよう考え動くことが、地元に根差した企業としては重要だと思っています。
-茂里商店さんでは、乾しいたけを使った手軽に楽しめる調味料や振りかける出汁なども多彩に展開されているんですね。
茂里 以前、私が指導している剣道教室の子どもに、「しいたけが嫌い」といわれたことがきっかけです。私は、子どもたちにもおいしく健康に良いしいたけを食べてもらいたい、嫌いな子にもしいたけを好きになってもらいたいと思い、乾しいたけを使った加工品として最初にドレッシングを開発しました。試しに近所の学校給食に使ってもらったところ、子どもたちに大好評。嫌いと私に言ってきた子も「しいたけが好きになった!」と言ってくれて、とっても嬉しかったですね。
世の中にしいたけが苦手という人は多いと思います。そういった人たちには、料理にさっと振りかけられる、原木乾しいたけのおいしさが詰まった「UMAMI椎茸パウダー」や戻し不要の振りかける出汁「万能椎茸だし」を試してもらい、普段イメージする乾しいたけとは別の角度から、乾しいたけのおいしさや魅力に気付いてもえたらなと思っています。また、普段から乾しいたけを食べる人にとっても、加工品にすることで、新たな使い道が提案できるのではと思っています。
-乾しいたけを使った加工品について、お客様からどのような声がありましたか?
茂里 「UMAMI椎茸パウダー」や「万能椎茸だし」を使ってみて、こんなにしいたけがおいしかったなんて知らなかったとおっしゃってくれる方もいました。もともと、乾しいたけのダシの取り方を知らない人もいらっしゃったので、そういった方にも好評でした。
「UMAMI椎茸パウダー」は、アイスクリームにかけると旨味が増しておいしくなるんです。羽田空港のマルシェで試食をしてもらったのですが、アイスとしいたけという意外な組み合わせながらも、旨味たっぷりでおいしい!と、みなさん驚いていました。見せ方や食べ方の工夫をして、今の時代に合ったしいたけの魅力を提案できれば、乾しいたけの可能性もまだ広がると思っています。
乾しいたけは焼いてもおいしい!
-地元ではどんな食べ方をされるのですか?
茂里 大分県の郷土料理に、小麦粉を練った団子が入った「だんご汁」というのがあるのですが、これを作る時には、必ずといっていいほど乾しいたけが入っています。乾しいたけの戻し汁を入れて、味噌を加えるだけでおいしいだんご汁になりますよ。
-乾しいたけをよく知る茂里さんだからこそ知る食べ方はありますか?
茂里 焼肉をする時に生しいたけを一緒に焼く方は多いと思いますが、私は乾しいたけを焼きます。4時間くらい水につけて戻した乾しいたけを焼くだけのシンプルな食べ方ですが、ポン酢をつけて食べるととってもおいしいです。乾しいたけは、煮物のイメージが強いですが、実は焼いてもおいしく食べられますよ。
お客様から教えていただいた食べ方だと、アヒージョにするという方もいましたね。フランス料理のシェフが使ってくださったり、和食以外でも楽しんでいただいています。
周りの仲間は“先生”。日々の学びが熱意の原動力
-乾しいたけの製造・販売を行っていて、どのようなときにやりがいや喜びを感じますか?
茂里 焼酎好きのお客様から、「茂里商店の乾しいたけを使った加工品がお酒に合うんや」などと言ってもらえた時は、とてもうれしいです。生産者さんをはじめ、いろいろな人と関わることで、新しい気づきがあり、毎日が勉強です。乾しいたけを扱うことに関してはプロですが、しいたけの本当の魅力を伝えることに関してはまだまだだと思っているので、勉強しながらしいたけの魅力を全国に伝えていければと思っています。こういうことを言うと、周りからは“熱い”って言われますが(笑)。
-茂里さんのその熱意の源は?
茂里 私はずっと剣道をやっていて、今は指導する立場ではありますが、みんな仲間であり、子どもであってもライバルです。子どもたちが成長する姿を見るたびに、私も彼らに負けないようにと刺激をもらっています。それは剣道だけではなく、仕事をはじめ、すべてのことにおいても同じで、私の原動力になっています。
持っている力や考え方などを尊敬し、学ばせてもらえる人が周りにたくさんいることは感謝の気持ちしかないですし、年齢に関係なく、みんな “先生”だと思っています。
-最後に、大分県産の乾しいたけについて、伝えたいことはありますか?
茂里 大分県の乾しいたけは、一度食べていただければ、そのおいしさをわかってもらえると思います。大分県には、乾しいたけのほかにもおいしい食材がたくさんあるので、一緒にコラボして、大分県産食材の魅力を伝えていければと思っております。
茂里商店の商品はこちらで取り寄せられます
https://www.mori-shouten.co.jp/
※記事の情報は2021年3月9日時点のものです。