「いいちこ」づくりの大ベテラン・丸尾剛さんが、全国各地の“酒場メシ”を食す! 今回訪れたのは、北海道出身の夫婦が沖縄の地で切り盛りする『大衆酒場こりす』さん。希少部位、豚のテールをとろっとろになるまで煮込んだ「酒肴豚尾」を、「いいちこ深薫」のロックとともにいただきます!

“酒場メシ”ハンター

丸尾剛さん

丸尾 剛(まるお つよし)
三和酒類株式会社 SCM本部所属 40年の焼酎づくりのキャリアを生かし、社内の若いつくり手たちのスキルアップをサポートする「焼酎づくりの先生」。普段家で飲むのは、もっぱら「いいちこ20度」か「いいちこ日田全麹」。最近、麹を使った調味料づくりにハマッている。

北海道の産直食材と捻りの効いた沖縄料理が堪能できる『大衆酒場こりす』

丸尾さんが訪れたのは、梅雨空の沖縄。ゆいレール・美栄橋(みえばし)駅から小雨が降ったり止んだりの中を歩くこと5分、『大衆酒場こりす』さんに到着しました。

『大衆酒場こりす』店内

待っていてくれたのは、土居賢太郎(どいけんたろう)さんと友美(ともみ)さん。夫婦二人三脚で店を切り盛りしています。

『大衆酒場こりす』土居さま
厨房の全てを取り仕切る賢太郎さんと、“店の営業マン”こと接客担当の友美さん

この店のウリはなんと言っても、北海道と沖縄の味が両方楽しめること。『こりす』という可愛らしい店名は、二人の出身地である北海道のエゾリスにちなんでいるそう。

『大衆酒場こりす』リスののれん

賢太郎「今でこそ沖縄料理も提供していますが、2019年の開店当初は北海道に特化した居酒屋だったんです。僕ら2人とも北海道出身なんで、食材を全て地元から取り寄せて。で、店の名前も北海道らしくと思って始めは『ヒグマ』ってつけようとしていたんですけど、開店ギリギリになってヒグマはイヤだと妻が言い出して(笑)」

友美「見た目がかわいい方が若いお客さんも来やすいですよね」

でもなぜ北海道出身の夫婦が、2200km以上も離れた土地で店を始めることに?

賢太郎「沖縄に来る前は、北海道でスープカレー屋をやっていたんです。うまくいっていたので、台湾にも店を展開して。でも、日本で豚熱が出てしまって、日本から台湾へスープカレーに欠かせない肉系の調味料の輸出ができなくなって。それで台湾の店を閉じることに。その時たまたま知人が沖縄に空き店舗があることをタイミングよく教えてくれて、だったらやってみようかなと」

友美「やるって決めたらやる人なんで、私が反対しても無駄かなって思いました(笑)」

友人も親戚もゼロの土地で、たった2人で始めた店。しかし厳選された北海道食材と、その後メニューに加わったオリジナリティ溢れる沖縄料理は次第に評判を呼び、今ではお客さんの8割が地元客。ご常連さんも多いと言います。

お酒をこよなく愛する店主が考案! 沖縄の食文化が薫る「酒肴豚尾」

屋号に『大衆酒場』と掲げるだけあって、料理にはこんなこだわりが。

賢太郎「僕は“お酒に料理”を合わせるのが酒場だと思ってるんですよ。逆に料理屋は、“料理にお酒”を合わせる。料理人になってからずっと、いつかお酒を飲んでもらえる場を作りたいという思いがあって。しかも誰でも入りやすい店。なので『大衆酒場』を看板にしたんです」

自身も熱心な愛酒家である賢太郎さん。「いいちこ」に合う料理としておすすめしてくれたのが、沖縄県産豚のテールを使った「酒肴豚尾(しゅこうとんび)」です。

『大衆酒場こりす』の「酒肴豚尾」

豚尾は豚1頭からわずか200gほどしか取れない希少部位。豚食文化が根付く沖縄では、一昔前までよく食べられていたそう。

賢太郎「昔はおでんなんかにも入れて食べていたみたいですね。豚は子どものうちに尻尾を切っちゃうんですよ。喧嘩すると尻尾を噛み合うことがあるらしく、そこからばい菌が入って病気にならないように。ただ、今は沖縄でも豚尾は捨てられているそうで。もったいないので仕入れて煮込んでみたら、すごくおいしかったんです。コラーゲンがとろとろで、嫌な臭いもなくて」

丸尾「牛のテールは食べたことあるけど、豚は初めてです」

「酒肴豚尾」には酸辣(サンラー)島唐辛子味、黒糖ブラックペッパー味、味噌シークワーサー味の3種があり、賢太郎さんが「いいちこ」にと選んでくれたのは酸辣島唐辛子味。

賢太郎「島唐辛子ってフルーティーないい香りがするんですよね」

合わせるのは「いいちこ深薫」のロック。賢太郎さんも仕事終わりに飲むのが日課だというお気に入りの「いいちこ」です。

賢太郎「北海道にいる父が昔から『いいちこ20度』の大ファンで、もうずっとそれだけ。だから小さい頃から家にあって、お酒=『いいちこ』というのが刷り込まれちゃってるんですよね」

「酒肴豚尾」に合わせる「いいちこ深薫」のロック

丸尾「では、いただきます!」

「酒肴豚尾」

丸尾「わぁ、ほんとプルプル。口の中でとろけます。コク深い味わいの中に、心地よい酸味もあって。最後に爽やかな辛さがピリッと。これが島唐辛子なんですねー」

初めてのおいしさの余韻に浸りつつ、「いいちこ深薫」のロックをひとくち。

「いいちこ深薫」のロックを飲む丸尾さん

丸尾「いやあ、さすが。バッチリの組み合わせです。『いいちこ深薫』は厚みのある味わいで、芳醇な香りが広がり、余韻が長く続くようなつくりに仕上げているんです。『酒肴豚尾』も味の持続性のある料理なので、その辺りも合うんでしょう」

賢太郎「僕は『いいちこ深薫』のカスタードみたいな香りが好きなんですよね。なおかつ体にスーッと入っていくような。仕事終わりに『深薫』を飲むと、『ああ、今日も仕事が終わった』って、気持ちがのんびりできるんです」

出汁を味わい尽くす! 「北海道活大アサリ鍋フーチャンプルー仕立て」

続いてのおすすめは「北海活大アサリ鍋フーチャンプルー仕立て」。フーチャンプルーとは沖縄の車麩を使った炒め物のことで、そこに北海道産のアサリを組み合わせて鍋に仕立てたオリジナル料理です。

『大衆酒場こりす』の「北海道活大アサリ鍋フーチャンプルー仕立て」

賢太郎「豚骨と鶏ガラで取った白湯スープに、活アサリの出汁も入れて。北海道のアサリは昆布とかを食べるので、すごくいい出汁がでるんですよ。少し油分を足すために、沖縄で作られているくんちゃま*ベーコンも加えています。特に地元のお客さんからよくご注文をいただきますね」

*くんちゃま…沖縄方言で豚の首周辺の肉のこと

これには、「いいちこ25度」の強炭酸割りをチョイスしました。

「北海道活大アサリ鍋フーチャンプルー仕立て」に合わせる「いいちこ25度」の強炭酸割り

丸尾「アサリ、粒がめちゃ大きいですね。身が全く縮んでなくてプリプリ」

「北海道活大アサリ鍋フーチャンプルー仕立て」の粒が大きなアサリ
「北海道活大アサリ鍋フーチャンプルー仕立て」の出汁を吸った車麩

丸尾「で、この麩がおいしい出汁を吸ってるんですよ。しかも卵でとじてあるから食べ応えもあって。沖縄には何度か来たことありますけど、こんなチャンプルーに出合ったのは初めてです」

そして、「いいちこ25度」の強炭酸割りをグビリ。

「いいちこ25度」の強炭酸割りを飲む丸尾さん

丸尾「あー、うんめぇ。炭酸のシュワシュワ感が『いいちこ』の風味を膨らませて、料理の味わいを引き立てますね」

ところで、沖縄のお酒と言えば泡盛。そんな土地で本格麦焼酎「いいちこ」が楽しまれていることについて、つくり手としての思いはいかに?

丸尾「感慨深いですね。なぜなら『いいちこ』づくりに欠かせない白麹菌って、泡盛づくりに使われる黒麹菌の白色変異株なんです。つまり、黒麹があったから白麹の歴史、ひいては『いいちこ』の歴史が始まったと言えます。我々つくり手がリスペクトしてやまないのが、泡盛文化なんです」

「どうしようって不安になることは、必ずしも悪いことではない」

『大衆酒場こりす』店内ののれん

2019年に北海道居酒屋としてスタートし、一躍繁盛店となった『大衆酒場こりす』。しかし2021年、新型コロナウイルス感染拡大の影響により一時休業に追い込まれました。

賢太郎「本当にきつかったですね。北海道からの物流もストップして、食材が入手できなくなったり。でも、その時に初めて沖縄の食材と向き合ったんです。そしたら当然沖縄には、北海道にはない良い食材がたくさんあるんですよね。例えば沖縄の魚は海藻ではなく珊瑚を食べるので味が淡泊ですが、少し昆布で締めたり、バターでソテーするだけでぐっとおいしくなる。これはコロナがなかったら、たぶん見なかった部分で。そうして自分で沖縄の食材を仕立てるようになったときに、自信が出てきたんです。それまでは北海道出身ということで、どこか沖縄料理に対して遠慮があった。でも今はメニューの半分が沖縄料理です」

コーレーグース

他の店では食べられない一風変わった沖縄料理は地元客の間でも評判となり、コロナ禍が落ち着いた今ではインバウンドも復活。観光で立ち寄るお客さんも増えてきました。

賢太郎「いやー、でも常に不安です。明日はお客さんが減るかもしれないぞ、とか。コロナ禍以降、居酒屋の使われ方も変わってきたような気がして。以前は『大将、こういう料理ないの?』とか我儘も言ってくれていたんですけど、最近それが減ってきちゃって。お客さんとの一体感というのが薄くなってきてやしないかと…」

その辺りについて、パートナーである友美さんは?

友美「ちょっと悲観的すぎじゃないかとは思いますけどね(笑)。でも、そうやってどうしようどうしようって考えることって、必ずしも100%悪いことではないと思っているので」

丸尾「そうそうそう。私も焼酎をつくるとき、後輩には『びびれ』と伝えています。ネガティブと言われるくらい、びびって段取りをしろと。その代わり焼酎の仕込みをするときは、このくらいびびって準備をしたんだから、ポジティブに楽しくやろうなって」

明日どうなるかわからない、という不安の中で賢太郎さんが大切にしていること。それは「毎日研ぎ澄ませて仕事をすること」なのだと言います。

賢太郎「やっぱり日々できることを、一切手を抜かずやることですよね。結局、隣の店との違いってどれだけ仕事をしているか。僕の仕事は料理。手を抜かず午前中から魚を仕入れて、野菜も自分で目利きしてって、当たり前のことなんですけど。立ち振る舞いも大事にしていて、制服や厨房は常に清潔な状態にしておくように心がけています。ホールスタッフも店を綺麗にして、しっかり笑顔が作れるように体調をコントロールして。体調管理もプロの仕事ですから」

そんな『大衆酒場こりす』さんを訪れて、丸尾さんいかがでしたか?

丸尾「いやぁ、素敵なご夫婦でした。“大衆酒場”とハードルを下げつつ、料理のレベルとお二人の志が高くて、非常に贅沢な時間を過ごさせてもらったなという感じです。『いいちこ』も“下町のナポレオン”という愛称で親しまれているお酒ですが、つくりはしっかりしたものを、という気持ちで日々仕込んでいます。お二人の話を聞いて、その部分にもすごく共感できました」

丸尾さんと談笑する賢太郎さんと友美さん

今回お世話になったお店はこちら!

『大衆酒場こりす』外観

『大衆酒場こりす』
沖縄県那覇市前島2丁目7-13
TEL:098-861-7055
営業時間:月~土17:00~24:00(L.O.23:00、ドリンクL.O.23:30) 日17:00~23:00(L.O.22:00、ドリンクL.O.22:30)※祝前日の営業時間は変更の場合あり
定休日:不定休

※記事の情報は2024年7月23日時点のものです。