「いいちこ」づくりの大ベテラン・丸尾剛さんが、全国各地の“酒場メシ”を食す! 今回は丸尾さんとゆかりの深い大分県日田市にある『たこ万本店』さんを訪問。丸尾さん自らおすすめする名物の「おでん」を「いいちこ日田全麹」のお湯割りとともにいただきます!
“酒場メシ”ハンター
丸尾 剛(まるお つよし)
三和酒類株式会社 SCM本部所属
39年の焼酎づくりのキャリアを生かし、社内の若いつくり手たちのスキルアップをサポートする「焼酎づくりの先生」。普段家で飲むのは、もっぱら「いいちこ20度」か「いいちこ日田全麹」。最近、麹を使った調味料づくりにハマッている。
温泉街すぐそば! 日田で旨いおでんを食べるなら『たこ万本店』
大分県日田(ひた)市内をとうとうと流れる三隈(みくま)川。『たこ万本店』はその三隈川から歩いて5分ほど、温泉街としても知られる隈(くま)地区にあります。
丸尾さんがこの店を訪れるのは、今回が初めてではありません。実は丸尾さんは、日田にある「いいちこ日田蒸留所」の元所長。三和酒類の本社は大分県宇佐市にありますが、所長時代の5年間は宇佐を離れて日田に赴任していたのです。「たこ万」はそんな丸尾さんが仕事帰りの立ち寄りスポットとして足しげく通っていたお店です。
杉森「よー丸尾さん! 久しぶりやね。元気にしちょったかい?」
丸尾「よー修さん! 久しぶりやのー」
懐かしい声で迎えてくれたのは、3代目店主・杉森修(すぎもりおさむ)さんです。
『たこ万本店』の創業は昭和7年(1932年)。製材所の番頭をしていた祖父が一念発起して始めた店なのだそう。
杉森「うちのじいさんの修行先が当時久留米(福岡県)にあった『たこ万』ちゅうおでん屋で。そこから暖簾分けしてもらったらしいです。で、親父が店を継いだんですけど、36年くらい前か、病気してしまって。その頃私は会社勤めしよったんですが、実家に戻ってこの店を継ぐことに」
店には先代の頃から通い続ける常連客もいれば、最近お酒の味を覚えたばかりという若者もいて、連日地元のお客さんたちで大賑わい。
杉森「あと日田にはいまだに『頼母子講*(たのもしこう)』ちゅうのが現役であるんですよ。なかには3つ4つ入っている人もいて。日田では、頼母子の寄合には飲みも必ずセットなんでね(笑)。そういうので店を利用してもらうことも多いんです」
丸尾「そうそう。店の奥に座敷もあって、私も大人数で来たときはよく使わせてもらってました。一人で来た時は、厨房のまな板が見えるカウンター席が私の定位置で。修さんが大きなまな板で料理をする姿をじーっと見ながら飲むのが好きやったなー」
*頼母子講…参加者で一定のお金を出し合い、困っている仲間に積み立てたお金を工面する相互扶助のしくみ。信用金庫の走りとも言われ、地域によっては「無尽講(むじんこう)」とも呼ばれている
豚バラ串に春菊⁉ ここでしか食べられない『たこ万』のおでん
そんな思い出に浸る丸尾さんに、お待ちかねのおでんが到着。
丸尾「これこれ。たこ万さんのおでんは鉄鍋で出てくるんですよ」
杉森「出汁は日高昆布にサバ節、カツオ節、干し椎茸。あと野菜ですね。玉ねぎを入れたり、白ねぎの青いところを入れたりして。あと濃口醤油と、隠し味に味噌をほんの少し」
杉森「これでも時代に合わせて結構味を変えたんですよ。親父のおでんはもうちょっとこってりした味やったけど、夏場でも食べられるように薄めにして、あっさりさせて」
『たこ万』のおでんは種にも特徴が。厚揚げや卵、ちくわ、大根などの定番はもちろん、レンコンや里芋、竹の子などの根菜もいろいろ。
丸尾「そして極めつけは豚バラ串と春菊! この2つは他じゃなかなか食べられんでしょう。では、いただきまーす!」
丸尾「いやぁ懐かしい。全然変わらない味です。あっさりした絶妙な味付けなんで、脂の多い豚バラ串も何本でも食べられるんですよね」
杉森「一人で10本くらい食べる方もいるんですよ。こっちが『もう勘弁してぇ』って言うくらい(笑)」
春菊はあまり火を通し過ぎずに、煮汁で5秒ほどしゃぶしゃぶして。
丸尾「この香りがいいんですよね。春菊のシャキシャキした歯ごたえも程よく残っていて」
おでんには「いいちこ日田全麹」のお湯割りを合わせます。割合は、お湯が7に焼酎が3。
丸尾「あぁ、しみる。『いいちこ日田全麹』は多めのお湯で割っても十分味わいが伸びるくらいガツンとしているので、それがあっさり味のおでんとよく合うんですよ」
「いいちこ日田全麹」はその名の通り、日田生まれ。丸尾さんが日田蒸留所の所長時代にリニューアルを手掛けた、とりわけ思い入れのある商品なのです。
丸尾「『日田全麹』は一言でいうと“芳醇な酒”なんです。レギュラーの『いいちこ25度』がすっきり系だとしたら、こっちは濃厚系。麹づくりの技をすべて集結させてつくった酒なので、麹感が半端ない。このまろやかさや甘い香りは『麹』がもたらしてくれるものなんですよ」
いつも以上に饒舌な丸尾さん。そして、これまた大好きだというレンコンのおでんに手が伸びます。
丸尾「やっぱりたこ万さんのおでんはうまいなぁ。日田を離れた今でも時々無性に食べたくなるんですよね」
『たこ万』ブレンドの甘い醤油で食べる「さつま地鶏のたたき」も外せない逸品!
次に丸尾さんが「これも食べんと損ですよ!」と熱く語るのが「さつま地鶏のたたき」。
新鮮な鶏肉の表面だけを炙ったレアな状態で、わさび醤油に付けていただきます。
海から遠い内陸部にある日田は、鶏肉王国・大分県の中でも特に昔から貴重なタンパク源として鶏肉がよく食べられていた地域。「鶏のたたき」を出す飲食店も数多あり、使う銘柄や部位、たれなどにその店々のこだわりが出るそう。
杉森「うちのはさつま知覧どりのモモ肉。旨味が濃くて噛み応えがあるんですよ。醤油は贔屓にしている地元の蔵のもので、2種類の醤油を自分でブレンドしてるんです」
丸尾「この醤油が甘くてね。最初はびっくりしたけど、もう途中からやみつき」
おともには「いいちこ」を緑茶で割った、その名も「いい茶こ」をチョイス。今回は「いいちこ日田全麹」と日田で収穫された一番茶の粉茶を使った、オール日田産の「いい茶こ」です。
丸尾「醤油をちょんと付けて…」
丸尾「たまらんなぁ。噛むほどにモモの脂がじゅわーっと。それが甘い醤油と溶け合って。やっぱりこの醤油がいい仕事していますね」
そして、早緑色の「いい茶こ」を重ねます。
丸尾「濃厚な鶏の旨味に、マイルドな緑茶ハイがめちゃ合います。レギュラー(いいちこ25度)で緑茶ハイを作ると爽やかさが際立つんですけど、麹をふんだんに使った『日田全麹』で作ると甘さが引き出されて、まろかな緑茶ハイになるんですよね」
杉森「自分もふだんはレギュラー派やけど、『日田全麹』の緑茶割りを初めて飲んだときは思わず『ウマッ!』ってなったよ(笑)」
“水郷日田”が育んだ料理と酒と人に出会う場所
聞けば、先祖代々日田で暮らしてきたという杉森さん。杉森さんが一番好きな地元の風景は?
杉森「やっぱり三隈川かな。まだ薄暗い朝方に川べりの遊歩道を歩きよったら、真っ白な朝霧が立ち上ってきて、ここは雲の上か?みたいになって。その景色がかっこいいんですよ。そこに街灯がポッとついているのがまた美しくてね」
古くから“水郷(すいきょう)”と呼ばれるほど、豊かな水を湛えた日田。山で育まれた水がこの街の人々の暮らしを潤し、ここにしかない食や文化、景観をつくりあげてきました。
杉森「うちでは出汁をとるにも風呂を沸すにも、いまだに全部井戸水を使ってるんですよ。量もずっと変わらんで、ここ30年枯れたことない。水のうまさは料理にも影響するやろうからね」
丸尾「日田蒸留所でも水道水ではなく地下水を汲み上げて焼酎を仕込んでいて。私の焼酎づくりの師匠はよく“水を使わせてもらっている”という言い方をしていましたけど、日田に来て本当にそのことを実感したんです」
そんな土地への感謝や、日田で暮らす人々への思いが込められているのが「いいちこ日田全麹」です。
丸尾「日田は、夏は暑いし、冬は寒い。その風土に似て、性格のさっぱりした人たちが多いんです。祭りが好きで、酒が好き。そんな日田の人たちのことを思いながらつくったお酒なので、数ある『いいちこ』の中でもパンチの効いた味になっているんです」
今夜も『たこ万』には、気風のいい日田っ子たちがおいしい料理と酒を求めて集まります。
杉森「私にとって大事なのは繋がり。縦の繋がりもあれば、横の繋がりもあって、みんなでワイワイやる。この店は食事の場であり、歓談の場であり、癒しの場でもあります。私の役目は“場”を提供して、そこでどれだけ良いサービスを行うかやね」
そんな『たこ万本店』さんを久しぶりに訪れて、丸尾さん、いかがでしたか?
丸尾「店を“場”として捉えたり、コミュニティの役割を担ったり、そこまで自分の役目を明確にして商売をやるってすごいことですよね。たぶん修さんには、日田の地に足をつけて生きてきたという誇りもあるのでしょう。そしてこういうお店があるからこそ、頼母子のような助け合いのシステムも地域に残っていけるんだと思います。今回久しぶりに訪れて、日田がもっと好きになりました」
今回お世話になったお店はこちら!
『たこ万本店』
大分県日田市隈2-8-5
TEL:0973-22-4411
営業時間:17:30~23:00(L.O.22:30)
定休日:不定休
日田に来たら立ち寄りたい!
『いいちこ日田蒸留所』
大分県日田市西有田810-1
TEL:0973-25-5600
営業時間:10:00~16:00
入場料:無料
定休日:毎週火曜日(祝日の場合は営業)・盆・年末年始
※記事の情報は2024年2月27日時点のものです。