皆さまにご愛顧いただいている本格麦焼酎のロングセラー「いいちこ」。実はこの商品名、大分弁にルーツをもちます。この記事では「いいちこ」の故郷、大分県のオモシロ方言をたっぷりご紹介。大分にゆかりのない方も思わず声に出して読みたくなる、個性豊かな方言が満載です!
「いいちこ」が生まれた大分県って、どんなところ? 県名の由来は?
“下町のナポレオン”の愛称で知られる本格麦焼酎「いいちこ」の故郷、大分県。九州北東部に位置し、福岡県や熊本県、宮崎県に隣接しています。瀬戸内海をまたげば山口県や愛媛県にも通じるため、トンネル数が日本一多いほど山がちな大分県では、古くから中国・四国地方と航路による往来が盛んでした。
大分県はおいしい食材の宝庫。県西部に広がるのは、“九州の屋根”とも呼ばれるくじゅう連山。そして東に行けば、豊後水道に面した日本有数のリアス式海岸。そんな大分県の起伏の多い地形と深い自然は、清らかな水をもたらし、かぼすや椎茸、関あじ・関さばなどの特産品に代表される豊かな山海の幸を育みます。
もうひとつ、大分県と言って忘れてはならないのが温泉です。「おんせん県」という異名をとるほど、大分県は源泉数・湧出量ともに日本一を誇ります。観光地としては別府や由布院が有名です。
「大分」という県名の由来は、もともと「おおきた」と呼ばれていた地に「大分」の字をあてたものと言われています。一説によれば、第12代天皇・景行天皇が豊後国(ぶんごのくに)を通った際に「広大なる哉、この郡は。よろしく碩田国(おおきた)と名づくべし」と言ったことから、「おおきた」と名付けられ、さらに読みが変化して「おおいた」になったそう。ちなみに「きた」は古語で「段」を意味し、「分」という漢字で表されることもあったことから、「大分」という地名には段々畑が広がっている風景を想像することもできます。
大分弁にはどんな特徴がある?
そんな大分県で話される方言には、一体どんな特徴があるのでしょうか?
前述したように、大分に暮らす人たちは昔から中国・四国地方の人々とも交流があったため、大分弁の一部には中国・四国・近畿で使われている言葉と似たようなものがあります。
「~よる、~しよる ※四国・中国でも使う」=~ている、~している
「あてこすり ※広島でも使う」=マッチ
「おおがっそう ※京都、岡山などでも使う」=髪が伸び放題の状態
大分弁には敬語表現が少なく、他県の人が耳にすると少々荒っぽく聞こえるものが多いという特徴もあります。発音しやすいという理由から、形容詞で連母音の融合が多くみられるのがその理由の一つです。男女問わずふだんから下記のような言葉を使うので、初めて聞く人にとってはややぶっきらぼうに聞こえるのかもしれません。ですが、昔から使われている方言であり、言葉の乱れではありません。
「たけー」=高い
「だりー」=だるい
「ぬきー」=温い
「ひれー」=広い
形容詞以外にも、「~(し)て」という接続助詞が「~(し)ち」に変化したり、動詞の音便化を多用したりと、大分弁には思わず声に出してみたくなるユニークな発音の変化のある言葉がたくさんあります。
「おもーた」=思った
「どうしち」=どうして
「でらんなる」=出なくなる
「どき」=どこへ
「いちみちきちくりー」=行って見てきてちょうだい
また、一口に大分弁と言っても、県北部(宇佐市、中津市など)、西部(日田市、玖珠郡など)、東部(杵築市、国東市など)、南部(豊後大野市、竹田市など)で話されている言葉は微妙に異なります。
「あげくのさんぱち ※北部や国東市などで使う」=揚げ句の果て、結局は
「かけえあわん ※南部で使う」=間に合わない、やってられない
「ごがすく ※中津方面で使う」=腹が立つ、不愉快になる
特に県西部は瀬戸内海に面していないせいか、四国・中国地方の影響がさほど見られず、その代わりに県内ではめずらしく、福岡県の方言のように「~ばい」「~たい」「~けん」が使われるという特徴があります。
実は「いいちこ」も大分弁! その意味は…?
大分弁と言えば、1979年に誕生した本格麦焼酎「いいちこ」の商品名も地元の方言に由来します。
「いいちこ」は、宇佐市や中津市の方言で「いいですよ」とか「よいですよ」という意味。「~ちこ」はこの地方特有の強調表現で、「そうちこ(そうだよ)」「~するちこ(~するよ)」というふうに使います。三和酒類が宇佐市に本社を置いていることから、地元の地域性を生かした親しみのある商品名ということで採用されました。
例えば友人や同僚に食事や飲みに誘われたとき、笑顔で「いいちこ!」と返事をしてみると、さらに楽しい気分が高まるかもしれません。
「いいちこ」を飲みながら使ってみたい! 大分弁一覧
ここでは数々のユニークな大分弁の中から、お酒を飲むシーンでも役立つ方言を厳選して一覧化。「いいちこ」の生まれ故郷、大分に思いを馳せつつ、ぜひ声に出して読んでみてください!
大分弁 | 意味 | 用例 |
---|---|---|
あぎりあぎり | だらだら、遅く、際限ない様子 | 休みん日くらいあぎりあぎり飲ましちくれ |
いいあんべえ | よい塩梅 | こんお湯割りの温度はいいあんべえだ |
えらしい | 可愛らしい | こんグラスの絵柄はえらしいのー |
おろいー | いじわる | あともう1杯だけ飲みたかったんに、おろいー |
かばしい | 香ばしい | どっかでスルメを炙るかばしい匂いがするのー |
ぐらぐらくる | 腹が立つ | あー!ぐらぐらきた。酒でも飲まんとやっとられん |
こそろもそろ | 全部、残さず | お酒ばかり飲まんで、料理もこそろもそろ食べないよ |
さぜくりおつる | 転落する | そげな千鳥足で階段を降りたら、さぜくりおつるで |
しかともしれん | くだらない | 飲み仲間にはしかともしれんことも言える |
しんけん |
とても、非常に |
この焼酎はしんけんうめー |
すいい |
酸っぱい |
思い切りすいいレモンサワーが飲みてー |
すくるる |
(寒さで体が)縮こまる |
すくるる夜は焼酎のお湯割りに限る |
そげー(こげー) |
そんなに(こんなに) |
そげー酔っちょらん |
ちかっと |
ちょっと(一杯飲む) |
今晩、ちかっとどげん? |
ちょうしんかわ |
調子の良い言葉 |
おごってもらうときだけ、ちょうしんかわ言うの |
どげでん |
どうでも |
上座、下座はどげでんいいき、はよう座んない |
なおす |
片づける |
マドラー使ったら、ちゃんともとのところなおしちょってよ |
なごうなる |
長くなる、寝る |
酔ったのー。ちょっとなごうなろう |
なしか |
なぜ |
今日、店休み? 定休日じゃないんに、なしか? |
なんぎな |
情けない |
こげなとこで寝てしもうて、なんぎなやっちゃ |
のみかた |
酒宴、酒宴の世話役 |
プレゼンがうまくいったき、のみかたじゃ |
ふげとれ |
食いしん坊 |
まだ食うん? ふげとれじゃなぁ |
ほたる |
捨てる、放る |
酔うと靴下をほたる癖がある |
むげねー |
かわいそう、気の毒 |
明日健康診断? 久しぶりの飲み会なのにむげねー |
やおねー |
大変 |
明日5時起きなん? そりゃやおねー |
よだきい |
面倒だ、きつい、つらい |
飲んだ後に風呂に入るんはよだきい |
<参考文献・サイト>
・篠崎晃一/著『九州・沖縄「方言」から見える県民性の謎』実業之日本社
・九州方言研究会/編『これが九州方言の底力!』大修館書店
・大分合同新聞社/著『大分方言語録 – 大分合同新聞・教えて!ぶんぶん〈大分方言〉改題』大分合同新聞社
・大分県ホームページ
※記事の情報は2024年7月5時点のものです。