「バーって、なんだかハードルが高そう…」、そんなイメージを持っている人も多いかもしれません。しかし、お酒ライターの児島麻理子さんによると、初心者でも気軽に楽しめる、多様なスタイルのバーが増えているのだとか。今回は児島さんに、バーの魅力にハマったきっかけから、知っておきたい最新トレンド、自分に合ったお店の見つけ方、そして今注目の「焼酎カクテル」の魅力まで教えていただきました。

この方にお聞きしました
児島麻理子(こじままりこ)さん
東京都生まれ。出版社勤務を経て、洋酒メーカーで11年間広報を担当。現在はお酒ライター、PRコンサルタントとして活動。バー巡りをライフワークとしており、これまで世界7カ国以上の蒸留所やバーを訪問。著書に「おうちでつくれるかんたんスパイスカクテル」がある。
児島さんがバーに惹かれる理由
もともと出版社で編集の仕事をしていた児島さん。バーの世界に足を踏み入れたのは、洋酒メーカーに転職したことがきっかけでした。
「それまではワインやスパークリングワインを飲むことが多かったのですが、洋酒メーカーに入社してカクテルやスピリッツの奥深い世界を知りました。特に印象的だったのが、会社が主催するカクテルコンペティションです。司会として、バーテンダーさんたちの真剣な姿を間近で見ていました。大ベテランの方でも手が震えるほど、一杯のカクテルに魂を込めている。その姿にまず心を奪われたんです」
そこからさまざまなバーに足を運ぶようになると、児島さんはバーが持つ独特の魅力に気づきます。
「バーって、お店ごとにまったく違う世界観があるんです。扉を開けると、まるで別世界に迷い込んだような感覚。一番身近な“非日常”だと思いました。それに、バー通いという趣味が一つ増えたことで、人生がより豊かになったと感じています。旅先でバーに立ち寄れば、バーテンダーさんがその町のガイド役になってくれて、ローカルな情報を教えてくれる。バーは、日常も旅も豊かにしてくれる存在なんです」

ここに注目①|ニューウェーブなバーが大人気
「バー」と聞くと、ビシッとしたバーテンダーがシェイカーを振る、重厚な雰囲気の「オーセンティックバー」を思い浮かべるかもしれません。しかし児島さんによれば、自由で多様なスタイルのバーも人気を集めているそうです。
カフェ・スタイル
「特に若い世代が手がける、海外のカルチャーに影響を受けたカジュアルなバーが面白いですね。例えば、イタリアのバルのように、昼はコーヒー、夜はカクテルと、一日中楽しめるお店が増えています。
ノルウェー発の『FUGLEN TOKYO(フグレン トウキョウ)』(東京・代々木公園)はコーヒー屋さんがベースですが、カクテルも本格的です。
四ツ谷駅から徒歩2分のカフェ&バー『TIGRATO(ティグラート)』(東京・四ツ谷)は、ジェラートとコーヒーカクテルが名物で、ジェラートもバーテンダーさんが作っているんだそうです。子供がジェラートを食べている横で、大人がカクテルを楽しんでいる…なんて素敵な光景が見られるお店です」


居酒屋コンセプト
居酒屋のようにフードメニューが充実しているバーも注目されているんだとか。
「『BW cave(ビーダブリューケイブ)』(東京・神泉)は、トップバーテンダーによる次世代の“カクテル酒場”。カクテルの定番「マティーニ」がタップで提供されるなど、カクテルを広く親しみを持ってもらえる試みをしているお店です。
『KOKUtEERU(コクテール)』(東京・池袋)は、焼き鳥の部位に合わせたカクテルを提案しています。料理に合わせてカクテルを選ぶという試みが面白いですよね」
立ち飲みスタイル
「ロンドンでバーテンダーをしていた野村空人(のむらそらん)さんがセレクトしたお酒を立ち飲み・角打ちスタイルで提供する『NOMURA SHOTEN(のむらしょうてん)』(東京・蔵前)も人気です。ソーダ割りやトニック割りなどでカジュアルにお酒を楽しめるスポットです」
ここに注目②|ホテルのバーも大進化
「最近は、ホテルバーも大きく進化しています。かつては画一的なイメージでしたが、今はバーそのものに強い個性があり、バーを目当てに訪れる人が増えました。初心者の方でも安心して利用できるうえ、非日常感あふれる独創的な体験ができます。
フォーシーズンズホテル東京大手町にある『VIRTÙ(ヴェルテュ)』(東京・大手町)は、オープン4年で「世界のベストバー50(World’s 50 Best Bars 2024)」42位に選ばれ、注目を集めました。絵本のようなメニューブックが楽しい、遊び心あふれるバーです。
ザ・リッツ・カールトン東京『THE BAR(ザ・バー)』(東京・六本木)では、オリジナルカクテルは、花をかたどった美しい専用グラスでいただけます。ラグジュアリーな非日常体験が味わえます」

ここに注目③|予約必須! 個性派バーテンダー
バーの楽しみ方のひとつに、「バーテンダーでお店を選ぶ」という視点があります。今、バーテンダーは技術を競うだけでなく、その個性や世界観でファンを魅了する“スター”のような存在になっています。
「お気に入りのバーテンダー、いわば “推し”を見つけると、バー通いはもっと楽しくなります。そのきっかけとしておすすめなのが、お酒のメーカーなどが主催するカクテルコンペティションです。自分の好きなお酒のコンペをチェックして、入賞したバーテンダーさんのお店に足を運んでみるのもいいでしょう。まるでアイドルを応援するように、その人の成長を見守る楽しみもあります。
世界的なバーのランキング『世界のベストバー(The World’s 50 Best Bars)』などを参考にしてみるものおすすめです。
例えば、『世界のベストバー(The World’s 50 Best Bars)』で日本最高ランクのバー「Bar BenFiddich」オーナーバーテンダーの鹿山博康(かやまひろやす)さん(Bar BenFiddich)。ご自身の畑で育てたハーブや植物を使い、独創的なカクテルを生み出しています。その世界観は唯一無二。

後閑信吾(ごかんしんご)さん(The SG Club ほか) は、現在世界5カ国でバーを展開、バーテンダーのスター化に一役買った存在です。バーテンダーが世界で活躍できる職業であることを、若いバーテンダーたちに示してくれています。

大竹学(おおたけまなぶ)さん(ロイヤル バー)は、2011年に世界的なカクテルコンペティションで優勝した業界の重鎮であるとともに、若いバーテンダーのメンター的な存在。佇まいがエレガントで、オーセンティックなバーの世界に憧れを持たせてくれる存在です」

ここに注目④|焼酎カクテルが人気上昇中
今、世界のバー・シーンで注目されているのが、自国のローカルスピリッツを使ったカクテルです。その流れの中で、日本の「焼酎」が大きな可能性を秘めていると児島さんは語ります。
「感度の高いバーテンダーほど、日本のアイデンティティを表現するために焼酎カクテルに挑戦しています。ジンやウォッカなど他のスピリッツと焼酎が決定的に違う点は、麹由来のうまみです。このうまみは、カクテルに深みと複雑さを与えてくれます」
海外のトップバーテンダーの中には、焼酎のうまみを「セイボリー(風味豊かで、うまみのある味)」と表現し、「少し加えるだけで味が決まる。まるでズルをしているような気分だ」と絶賛する人もいるそうです。
「特に『いいちこ』は、海外のバー・シーンで長年かけて評価を築いてきました。その魅力が逆輸入される形で日本のバーテンダーにも再認識され、今、日本の焼酎カクテルは大きな転換期を迎えています。これまで焼酎を飲まなかった人にも、カクテルという形でその新しい魅力に触れてみてほしいですね」
最後に、バー初心者の皆さんへ、児島さんからメッセージをいただきました。
「バーは、 “一番身近な非日常”を体験できる場所。そして、家でも職場でもない“新しいサードプレイス”にもなり得ます。気分転換したいとき、新しい刺激がほしいとき、気軽に扉をたたいてください。そして、あなただけの“推し”のバーやバーテンダーを探して、自分らしい楽しみ方を見つけてください」

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※記事の情報は2025年9月26日時点のものです。